会社設立時に必ず作成する「定款」や「登記申請書」に記載する事業目的。
この事業目的の書き方次第で、後々の経営や許認可取得に大きな影響が出ることをご存知でしょうか?
「とりあえず書けばいい」と軽視しがちなこの項目ですが、司法書士としての実務経験上、後から困るケースが非常に多いのが実情です。
この記事では、会社設立に強い司法書士が、事業目的の正しい書き方と注意点について、具体例を交えてわかりやすく解説します。
事業目的とは?司法書士がわかりやすく解説
会社の「やること」を明文化したもの
事業目的とは、会社が将来的に行う事業活動の内容を示すものです。定款や登記簿謄本(履歴事項全部証明書)に記載されるため、法的にも会社の「顔」のような存在といえます。
事業目的の記載が必要な場面
- 会社設立時(定款作成・登記申請)
- 銀行口座開設時(事業内容の確認)
- 許認可申請時(建設業、運送業など)
- 補助金・助成金の申請時
- 新規事業を始めるとき(目的変更登記)
つまり、「将来やるかもしれない事業」も含めて、あらかじめ想定しておくことが大切です。
【司法書士視点】事業目的の書き方の基本ルール
事業目的の作成においては、ただ自由に書けばいいわけではなく、いくつかのルールや実務的な慣例があります。
1. 法令に反しない表現であること
当然ながら、法律に違反するような内容は登記できません。
例えば、「違法薬物の販売」「反社会的組織との取引」などは論外です。
2. 営利性があること
営利を目的としない内容(ボランティア活動など)は、株式会社の目的には不適切とされます。
司法書士が登記申請を行う際にも、営利性の有無を法務局がチェックします。
3. 明確性と具体性を持たせる
あまりにも抽象的な表現は、認められないことがあります。
悪い例:
- 「販売業」→ 何を販売するのか不明確
- 「コンサルティング業」→ どの分野なのか具体性がない
良い例:
- 「日用品の販売業」
- 「経営戦略に関するコンサルティング業」
4. 許認可業種は注意が必要
許認可が必要な業種(建設業、運送業、宅建業など)は、特定の文言を含める必要があります。
例えば:
- 建設業:◯◯工事業、建築工事業 など
- 宅建業:不動産の売買、仲介、管理、賃貸 など
司法書士は、目的文言が適切かどうかを行政書士や各所轄官庁と連携しながら確認することもあります。
5. 他社の事業目的を参考にしすぎない
よく「同業他社の登記簿を見てコピペする」方がいますが、それは危険です。
古い言い回しや不要な業種までそのまま記載してしまうと、後で修正が必要になることも。
【司法書士がよく受ける質問】事業目的に関するQ&A
Q. 目的はいくつまで書けるの?
A. 制限はありませんが、3〜10個程度が現実的です。
司法書士としては、必要なものだけを絞って記載するのをおすすめしています。
目的が多すぎると、「何の会社かわからない」と思われ、金融機関や取引先から不信感を抱かれることも。
Q. あとから目的を追加できますか?
A. 可能です。
ただし「定款変更決議(株主総会決議)→登記申請」という手続きが必要で、司法書士のサポートが不可欠です。
コストも時間もかかるため、最初から余裕をもって記載しておくのが安全です。
Q. 英語表記は使えますか?
A. 一部使用可能ですが、意味が不明確だと法務局で登記が却下されることもあります。
司法書士としては、日本語でわかりやすく記載することを推奨しています。
【例文つき】事業目的の書き方サンプル
司法書士として実際によく使われる事業目的の例を業種別に紹介します。
IT系企業
- インターネットを利用した各種情報提供サービス
- ウェブサイト・アプリケーションの企画、開発、販売及び保守
- ITコンサルティング業務
飲食業
- 飲食店の経営
- 食品の製造、販売及び輸出入
- ケータリングおよびデリバリーサービスの提供
建設業
- 建築工事業
- 土木工事業
- 建築資材の販売及び輸出入
コンサル業
- 経営戦略、組織改革、業務改善に関するコンサルティング業
- 人材育成及び研修業務の企画・運営
司法書士が教える「目的の書きすぎ」に注意
事業目的を多く書くのは悪いことではありませんが、内容がブレていると信頼性が低く見えることも。
また、将来的に不要な目的があると、「定款変更の手間」や「登記費用の無駄」につながります。
司法書士に相談すれば、事業計画に合った目的のみを効率よく選定できます。
目的変更登記は司法書士に依頼すべき理由
手続きが複雑かつ期限あり
- 株主総会の特別決議が必要
- 登記は決議日から2週間以内
- 登記申請書類が多い
上記をミスなく進めるには、司法書士の専門知識が不可欠です。
定款の整合性チェックも必要
目的変更の際は、定款内容の整合性やその他の記載事項の見直しも必要になることがあります。
司法書士は、会社の登記情報全体を確認し、トラブルを未然に防ぎます。
【まとめ】事業目的の書き方で会社の将来が変わる
会社設立はスタート地点。
しかし、最初の一歩である「事業目的の書き方」を誤ると、その後の経営に大きな支障をきたすことがあります。
司法書士に依頼すれば、
- 定款作成と登記手続きの一括サポート
- 業種や許認可に合わせた適切な目的設定
- 目的変更時のアドバイスとスピード対応
といった総合的な法務サポートが受けられます。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階