はじめに|遺言書が「無効」になる?それ、本当に大丈夫ですか?
遺言書は、残された家族への想いを伝え、トラブルを防ぐ大切な書類です。中でも自筆証書遺言は、自分で簡単に書けるというメリットから多くの方に利用されています。
しかし実際には、「せっかく書いたのに無効になってしまった」というケースが少なくありません。司法書士として数多くの相続手続きに関わる中で、自筆証書遺言が原因で起きる相続トラブルを数多く目にしてきました。
この記事では、自筆証書遺言が無効になった具体的なケースや、失敗を防ぐためのポイントを、司法書士の視点から解説します。これから遺言書を作成したい方、すでに書いたものがある方は、ぜひ参考にしてください。
自筆証書遺言とは?司法書士が基本から説明
自筆証書遺言の特徴
自筆証書遺言とは、遺言者本人が全文を手書きで記載し、署名・押印・日付を記載することで成立する遺言の形式です。公正証書遺言と違い、公証役場に行く必要がなく、自宅で気軽に作成できるのが最大のメリットです。
司法書士が指摘するデメリット
ただし、形式的なミスや内容の曖昧さによって、法律上「無効」と判断されることがあるため注意が必要です。司法書士の立場から見ると、専門家のチェックを受けずに作成した自筆証書遺言にはリスクが多いというのが実情です。
自筆証書遺言が無効になった主なケース【司法書士が解説】
ケース①:日付が不明確で無効に
「令和5年春頃」といったあいまいな日付では、民法が求める「日付の記載」が不十分と判断され、遺言書が無効になることがあります。
司法書士から見ると、日付は「〇年〇月〇日」と具体的な年月日で記載することが重要です。これは遺言書の作成日を特定し、遺言能力の有無や他の遺言との関係を明確にするためでもあります。
ケース②:財産の分け方が不明確
「長男に土地を相続させる」とだけ書かれていた遺言書で、どの土地を指しているのかが不明で相続人間のトラブルとなったケースもあります。司法書士の立場からは、不動産の登記簿記載通りに物件情報を明記することが必須です。
例:
「東京都〇〇区〇〇1-2-3 所在、地番〇番〇、宅地〇㎡、所有権全部を長男〇〇に相続させる」
このように詳細に記載しなければ、せっかくの遺言がトラブルの元になりかねません。
ケース③:代筆・パソコン入力による無効
本人の希望であっても、第三者による代筆やパソコン入力による作成は無効とされます。遺言者本人が手書きでない限り、自筆証書遺言として認められません。
司法書士に相談すれば、こうした形式違反を避けるために、公正証書遺言を提案することも可能です。
ケース④:押印の欠落・署名忘れ
複数ページにわたる遺言書の一部に押印がない場合、そのページが改ざんの疑いありとして無効になることがあります。司法書士としては、各ページに署名・押印することを強く推奨しています。
自筆証書遺言の「よくある誤解」司法書士が正します
「家族が内容を知っていれば問題ない」は誤解
たとえ家族全員が納得していても、法律上の要件を満たしていなければ無効となります。司法書士としては、「気持ち」よりも「形式」が重要であることを強調したいところです。
「封筒に入れて保管しておけば安心」は危険
発見されない、または意図的に破棄されるケースも。司法書士は、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」の利用をおすすめしています。これにより紛失・改ざんのリスクが軽減し、家庭裁判所での「検認」も不要になります。
無効を防ぐために|司法書士がすすめる5つの対策
① 正確な日付と署名・押印を忘れずに
- 「〇年〇月〇日」
- 氏名はフルネーム
- 認印でも可だが、実印が望ましい
② 財産内容は具体的に
- 預貯金:銀行名・支店・口座番号まで
- 不動産:登記事項を正確に転記
③ 書き直す際は前の遺言書の破棄を明記
古い遺言書が残っていると、複数の遺言が存在し混乱を招くことがあります。司法書士のアドバイスで「この遺言書により、すべての過去の遺言を撤回する」と記載しましょう。
④ 家族に伝える or 保管制度を利用する
- 内容は伏せても、「遺言書を作成したこと」だけは伝えておく
- または、法務局で保管制度を活用
⑤ 専門家(司法書士)にチェックを依頼
司法書士は、自筆証書遺言のチェック・指導を通じて、法的に有効な内容となるようサポートします。形式の不備、記載漏れなどは第三者である司法書士だからこそ気づける点が多数あります。
司法書士ができるサポートとは?
遺言書作成の相談
司法書士は、自筆証書遺言だけでなく、公正証書遺言や秘密証書遺言など、状況に応じて適切な遺言の形式を提案できます。
相続人調査・財産調査
誰が相続人に該当するのか、どの財産が対象になるのかを正確に洗い出すことも、司法書士の重要な業務の一つです。
遺言執行者としての対応
司法書士が遺言執行者として指定されていれば、中立な立場で遺言の内容を実現する役割も担います。
まとめ|司法書士に相談して「確実な遺言書」を残そう
自筆証書遺言は便利な制度ですが、ちょっとしたミスで「無効」とされてしまうリスクがあります。
「これで大丈夫だろう」という思い込みが、相続トラブルの火種になることも…。
だからこそ、司法書士という法律のプロに相談し、確実で有効な遺言書を残すことが、家族に対する本当の優しさではないでしょうか。
遺言書の作成・チェックは司法書士へお気軽にご相談ください
当事務所では、遺言書作成のご相談を初回無料で承っております。
「今の遺言書が有効か不安」「どうやって書けばよいかわからない」といった方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階