「会社を設立した後に、もっと考えておけばよかったと後悔したくない」
「事業目的や資本金は、どう決めればいい?」
「一人会社と共同経営では、株式や役員をどう設計すればいい?」
会社設立を考えている方の中には、このような疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
会社設立は、登記申請をして法人を作れば終わりというものではありません。
事業目的、商号、本店所在地、資本金、株式、役員、機関設計など、設立時に決めた事項が、その後の会社経営に影響することがあります。
特に、設立後に変更すると登記や定款変更などの手続きが必要になる事項もあるため、設立前に将来の事業展開をある程度考えておくことが大切です。
この記事では、会社設立を検討している方が後悔しやすいポイントを整理し、設立前に何を検討しておけばよいのかを司法書士の視点からわかりやすく解説します。
会社設立で後悔しないためには「設立前の設計」が重要
会社を設立するときには、さまざまな事項を決める必要があります。
株式会社の場合、たとえば、
- 商号
- 本店所在地
- 事業目的
- 資本金
- 発行可能株式総数
- 株式の譲渡制限
- 役員
- 取締役の任期
- 事業年度
- 公告方法
- 会社の機関設計
などについて検討します。
これらを「とりあえず決めてしまう」と、設立後に「別の形にしておけばよかった」と感じることがあります。
法務省も、株式会社の設立登記について、定款の認証や設立登記など一定の手続きが必要であることを案内しています。
会社設立では、「登記できるか」だけでなく、「この設計で今後の事業を続けやすいか」まで考えることが重要です。
会社設立で後悔しやすい5つのポイント
ここからは、会社設立前に特に検討しておきたいポイントを紹介します。
1.事業目的を十分に検討しなかった
会社設立時に作成する定款には、会社の「目的」を記載します。
事業目的とは、簡単にいうと、会社がどのような事業を行うのかを示すものです。
たとえば、IT関連の会社であれば、
- システム開発
- ソフトウェアの企画・開発
- Webサイトの制作
- ITコンサルティング
など、予定している事業に応じて目的を検討します。
将来やりたい事業も考えておく
設立時点では一つの事業だけを考えていたものの、数年後に新しい事業を始めることがあります。
その際、現在の定款の目的では対応しにくい場合には、目的変更の手続きが必要になることがあります。
もちろん、将来やる可能性がある事業を何でも記載すればよいというわけではありません。
現在の事業内容と、近い将来に展開する可能性のある事業を整理したうえで、適切な事業目的を検討することが大切です。
法務省も、会社の目的について、記載内容によっては官公庁への届出や取引などで不都合が生じる可能性があるため、十分な注意が必要と案内しています。
2.資本金を「とりあえず1円」で決めてしまう
株式会社は、資本金1円でも設立できます。
そのため、
「最低限の資本金で会社を作ればいい」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、資本金は単純に「少なければ少ないほどよい」というものではありません。
設立後には、
- 事務所の賃貸費用
- パソコンや設備の購入費
- 広告宣伝費
- 人件費
- 仕入れ費用
- その他の運転資金
など、さまざまな費用が発生します。
そのため、会社設立時には、設立後しばらくの間に必要となる資金も考慮して資本金を決めることが重要です。
資本金は税務面も考えて決める
資本金の額は、税務上の取扱いにも関係する場合があります。
そのため、資本金については司法書士だけで判断するのではなく、税理士などにも相談しながら決めることが重要です。
「1円で会社を作れる」ことと、「1円で会社を始めるのが適切」なことは別問題です。
3.共同経営なのに株式の配分を十分に考えなかった
複数人で会社を設立する場合、特に注意したいのが株式の配分です。
たとえば、友人2人で会社を設立する際、
「お互いに半分ずつ出資すれば公平だろう」
と考えるケースがあります。
しかし、会社の意思決定について考えると、単純に50%ずつにすることが常に適切とは限りません。
会社の重要な事項について意見が対立した場合、株式の保有割合によっては意思決定が難しくなることがあります。
設立時に「誰が会社をコントロールするのか」を考える
共同経営の場合は、
- 誰が代表取締役になるのか
- 誰がどれだけ出資するのか
- 株式をどの割合で持つのか
- 将来、株主を増やす可能性があるか
- 共同経営者が退任した場合にどうするか
などを事前に検討しておくことが大切です。
特に、友人や家族など親しい関係で会社を始める場合でも、「後から話し合えばいい」と考えず、最初にルールを明確にしておくことがトラブル防止につながります。
4.役員の任期や会社の機関設計を考えていなかった
株式会社を設立する場合、取締役などの役員についても検討する必要があります。
たとえば、取締役会を設置するのか、取締役を何人置くのか、取締役の任期をどうするのかなどです。
取締役の任期は原則2年ですが、一定の条件を満たす株式会社では、定款で最長10年まで伸長することができます。
そのため、会社の規模や経営体制によっては、役員任期をどのように設定するかも重要になります。
小規模会社ならシンプルな設計が適している場合も
すべての会社に大きな組織が必要なわけではありません。
たとえば、創業者1人または少人数で経営する会社であれば、事業規模に合ったシンプルな機関設計を検討することができます。
一方、将来的に出資者を増やしたり、会社規模を大きくしたりする予定がある場合には、それを踏まえて設計することも重要です。
5.本店所在地を安易に決めてしまった
会社設立時には、本店所在地も決める必要があります。
「とりあえず自宅を本店にしよう」
という選択もありますが、事業内容によっては慎重に検討したほうがよい場合があります。
たとえば、
- 自宅住所を登記することへの抵抗がある
- 将来オフィスを借りる予定がある
- 賃貸物件で法人登記が認められていない
- 許認可の関係で営業所の所在地が問題になる
といったケースです。
自宅を本店にする場合は確認が必要
自宅を本店にする場合には、賃貸借契約の内容や管理規約なども確認しておくと安心です。
また、事業内容によっては、会社の本店所在地とは別に営業所などの施設が必要になることもあります。
「登記できる住所か」だけではなく、実際にその場所で事業を行えるのかという観点から確認することが大切です。
「自分で会社設立すれば安い」とは限らない
会社設立の手続きは、自分で行うこともできます。
法務局では株式会社や合同会社の設立登記について、申請方法や必要書類を案内しています。
そのため、
「専門家に頼まず、自分で設立すれば費用を節約できる」
と考える方もいます。
これは一つの選択肢です。
ただし、会社設立では単に申請書を書くだけではなく、設立前の会社設計を考えることも重要です。
自分で手続きする場合に注意したいこと
たとえば、
- 事業目的の記載
- 商号
- 本店所在地
- 株式の設計
- 役員構成
- 取締役の任期
- 定款の内容
- 資本金
- 設立後の変更手続き
などを自分で確認する必要があります。
登記手続きそのものはできても、設立後に「目的を変更したい」「役員構成を変えたい」「株式の整理が必要になった」ということになれば、別途手続きや費用が発生する場合があります。
会社設立前に確認したいチェックリスト
会社を設立する前に、次の項目を確認しておくとよいでしょう。
事業について
□ どのような事業を行うのか決まっている
□ 将来的に行いたい事業を整理している
□ 許認可が必要な事業ではないか確認した
会社の基本事項について
□ 商号を決めた
□ 本店所在地を決めた
□ 資本金を検討した
□ 事業年度を決めた
□ 事業目的を検討した
株主・役員について
□ 誰が株主になるか決めた
□ 株式の保有割合を検討した
□ 誰が代表者になるか決めた
□ 役員構成を検討した
□ 取締役の任期を検討した
設立後について
□ 設立後の運転資金を確保している
□ 税務について税理士に相談した
□ 必要な許認可を確認した
□ 法人口座など設立後の手続きを確認した
このチェックを設立前に行うだけでも、後から変更する事項を減らしやすくなります。
会社設立で司法書士に相談するメリット
司法書士は、会社・法人の設立登記などを専門的に取り扱う法律専門職です。
法務省によると、司法書士の業務には、会社・法人に関する登記申請手続きの代理が含まれています。
会社設立では、司法書士に相談することで、
- 設立登記の必要書類の確認
- 定款の内容についての相談
- 会社の機関設計についての検討
- 役員構成の確認
- 株式・株主構成についての相談
- 設立登記の申請
- 登記完了後の登記事項証明書の取得
など、登記を中心とした手続きをサポートしてもらえます。
ただし、税務については税理士、許認可については行政書士など、専門分野が異なります。
そのため、会社設立では司法書士だけですべてを判断するのではなく、必要に応じて税理士や行政書士など他の専門家と連携することも重要です。
会社設立は「登記すること」だけを考えない
会社設立というと、
「登記申請をして会社を作る」
というイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、実際には会社設立前に決める事項がたくさんあります。
特に重要なのが、
「この会社を5年後、10年後にどうしたいのか」
という視点です。
もちろん将来のことをすべて予測することはできません。
それでも、
- 事業を拡大する予定がある
- 従業員を雇う予定がある
- 共同経営をする
- 将来、株主を増やす
- 新しい事業を始める
- 許認可が必要な事業を行う
といった予定があるなら、設立時点である程度考えておくことが大切です。
まとめ|会社設立で後悔しないためには設立前の準備が重要
会社設立で後悔しないためには、登記手続きを正確に行うだけではなく、設立後の事業運営を見据えて会社の基本設計を検討することが重要です。
特に確認しておきたいのは、次の5つです。
- 事業目的を十分に検討する
- 資本金を事業資金とのバランスで考える
- 株主構成・株式の配分を慎重に決める
- 役員構成や任期などを検討する
- 本店所在地を将来の事業展開も考えて決める
「とりあえず会社を作ってから考える」のではなく、設立前に専門家へ相談することで、後から変更する手間や思わぬトラブルを減らせる可能性があります。
会社設立を検討している方は、登記手続きだけでなく、**「自分の会社にはどのような設計が合っているのか」**というところから検討してみてはいかがでしょうか。
会社設立・法人登記のご相談は司法書士へ
会社設立では、事業内容や出資者、役員構成などによって適した設計が変わります。
「株式会社と合同会社のどちらがよいかわからない」
「会社の目的をどう決めればよいかわからない」
「共同経営なので株式の割合で悩んでいる」
「会社設立の登記手続きを任せたい」
といった場合には、早い段階で司法書士に相談することをおすすめします。
司法書士は会社・法人の設立登記をサポートする専門家です。設立後に変更することになれば手続きが必要になる事項もあるため、会社を作る前に相談することが、後悔のない会社設立への第一歩になります。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号