商業登記

会社設立手続を司法書士へ依頼した場合の利点、費用などについて

司法書士に会社設立手続を依頼することの利点

会社設立は、必要書類の作成から法務局への登記申請まで、多くの専門的な作業を伴います。これらをスムーズに進めるために、司法書士へ依頼する選択肢は非常に有効です。以下では、司法書士に依頼する具体的な利点について詳しく解説します。

専門知識に基づく正確な書類作成

司法書士は、登記に関する専門家として、会社設立に必要な定款や登記申請書類を正確かつ法的に適切な形で作成することができます。自分で作成した場合にありがちな、形式の不備や法律上の誤りを回避することができます。

  • 定款の不備を防止:定款内容に誤りがあると、法務局での受付がされないケースも。司法書士なら事前にチェックを徹底。
  • 法改正への対応も万全:商業登記法などの改正にも精通しているため、最新の法制度に基づく書類を用意可能。

手続きのスピードアップと時間短縮

会社設立には複数の機関とのやり取りが必要で、時間と手間がかかります。司法書士に依頼すれば、これらの工程をスムーズに代行してくれ、結果として設立までの期間を短縮できます。

  • 登記申請まで一括サポート:法務局への申請手続きもすべて任せられる。
  • ビジネス開始を早められる:設立手続きにかける時間を削減でき、本業に専念可能。

法的トラブルの予防

設立時に見落とされがちな法的リスクについても、司法書士なら事前に助言が可能です。組織構成や代表権の設定など、トラブルになりやすい点について適切なアドバイスを受けられます。

  • 将来的な紛争を防ぐ設計:出資割合や役員構成など、トラブルの火種になり得る要素を適切に整理。
  • 信頼できる第三者の視点:客観的かつ法的に整合性のあるアドバイスが得られる。

電子定款の作成によるコスト削減

司法書士に依頼すれば、電子定款の作成が可能です。これは紙の定款に必要な印紙代4万円が不要になるため、コストを抑えながら会社を設立できます。

  • 印紙代が不要に:電子定款なら印紙税が非課税対象となる。
  • 電子認証もスムーズ:司法書士は電子認証の手続きにも対応しており、専門知識が不要。

会社設立手続を司法書士に任せる際の注意点やリスク

司法書士に会社設立を依頼することで多くのメリットが得られますが、すべてが完全に安心・万全というわけではありません。依頼前に知っておくべき注意点や想定されるリスクについて、事前に理解しておくことが大切です。

サービスの範囲に限界がある

司法書士は「登記の専門家」ではありますが、税務や労務関連の手続きは対象外となる点に注意が必要です。

  • 対応できるのは主に登記業務:税務署への開業届、社会保険や雇用保険の手続きは別途専門家(税理士や社労士)への依頼が必要です。
  • ビジネス全体の支援は限定的:経営戦略や資金調達のアドバイスまで求めるなら、他の専門家との連携が必要になります。

費用が事務所によって大きく異なる

司法書士事務所によって、サービスの内容・料金体系がバラバラです。相場を把握せずに依頼すると、割高になるリスクがあります。

  • パッケージ内容を要確認:費用に含まれる範囲(定款作成、登記申請、電子定款対応など)をしっかり確認しましょう。

経験や対応力には個人差がある

同じ司法書士でも、会社設立業務に慣れているかどうかで対応の質に差が出ることがあります。

  • 初回相談で見極めるのが重要:コミュニケーションの丁寧さや、説明のわかりやすさを確認しましょう。
  • 法人設立の実績を確認:過去の対応件数や法人顧客の有無など、信頼できるかどうかの判断材料になります。

会社設立を司法書士に任せた場合の費用相場

会社設立を司法書士に依頼する場合、いくらくらいの費用がかかるのかは多くの起業予定者が気になるポイントです。ここでは、実際の費用相場を構成要素ごとに分けて解説し、どこにコストがかかるのか、どのような点に注意すべきかを紹介します。

司法書士への報酬の相場

司法書士の報酬は事務所ごとに異なりますが、株式会社設立の場合、一般的には5万円~10万円程度が相場です。パッケージの内容によって金額が大きく変動します。

  • シンプルな書類作成+登記代行:5~6万円
  • 電子定款作成込みのフルサポート:7~10万円

※合同会社の場合は手続きが簡略な分、報酬も6~8万円程度と比較的安くなる傾向があります。

実費として発生する法定費用

司法書士への報酬とは別に、会社設立に必要な**法定費用(国に支払う手数料)**が発生します。これは司法書士に依頼してもしなくても、必ずかかる費用です。

株式会社設立の場合の法定費用

  • 定款認証手数料(公証役場):約50,000円
  • 登録免許税(法務局):150,000円(資本金の0.7%・最低額)
  • 定款印紙代:40,000円(※電子定款なら不要)

▶ 合計:最大240,000円(電子定款利用で200,000円程度)

合同会社設立の場合の法定費用

  • 登録免許税:60,000円(資本金の0.7%、最低額)
  • 定款印紙代:40,000円(※電子定款なら不要)

▶ 合計:最大100,000円(電子定款利用で60,000円程度)

電子定款対応で節約できる費用

司法書士に依頼するメリットの一つが、電子定款に対応している点です。電子定款を利用すると、紙の定款に必要な40,000円の印紙代が不要になります。

  • 自分で電子定款を作成するには、電子証明書や専用ソフトが必要で手間がかかる
  • 司法書士に依頼すれば、すでにシステムが整っておりスムーズに対応可能

結果的に報酬を支払ってもトータルコストが安くなることもあります。

注意:安さだけで選ばないことが重要

「格安」をうたう司法書士事務所もありますが、サービス内容が限定的だったり、設立後のサポートが不十分な場合もあります。

  • 契約前にサービスの範囲や追加料金の有無を確認
  • 費用だけでなく、対応の丁寧さや実績も重要な判断材料

司法書士に会社設立を依頼した際のステップ別手続きの概要

会社設立を司法書士に依頼すると、複雑な手続きをスムーズに代行してもらえます。ただし、すべてを丸投げできるわけではなく、依頼者側が関与する場面もあります。ここでは、司法書士に会社設立を依頼した際の一般的な流れを、ステップごとに詳しくご紹介します。

ステップ1:初回相談・ヒアリング

まずは司法書士と面談または電話・オンラインでの相談を行います。ここで、設立したい会社の概要や希望条件についてヒアリングが行われます。

  • 会社の種類(株式会社、合同会社など)
  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 事業目的
  • 資本金の額と出資者
  • 役員構成(取締役・代表者など)

この情報をもとに、司法書士は必要書類の作成準備に入ります。

ステップ2:定款の作成と確認

司法書士が会社の基本ルールを定めた「定款」の案を作成し、依頼者に内容を確認してもらいます。

  • 事業目的が曖昧な場合:法的に適切な表現に修正して提案
  • 電子定款に対応:印紙代4万円が不要になるため、コスト削減につながる

確認後、電子定款として正式に作成され、公証役場で認証を受けます(株式会社の場合)。

ステップ3:出資金の払い込み

定款認証後、依頼者(発起人)は資本金を自身の銀行口座に払い込みます。これは設立登記の前提条件となります。

  • 通帳のコピー提出が必要:払込証明書を作成するため、通帳の表紙・記帳欄の写しなどが必要になります

ステップ4:登記申請書類の作成・押印

司法書士が設立登記に必要な各種申請書類を作成します。依頼者は必要な書類に署名・押印を行います。

  • 登記申請書
  • 払込証明書
  • 発起人決議書(必要に応じて)
  • 就任承諾書(取締役・監査役など)
  • 印鑑届書(会社実印の登録)

ステップ5:法務局への登記申請

書類が整い次第、司法書士が法務局へ設立登記を申請します。提出後、通常1週間日程度で登記が完了します。

ステップ6:登記完了後、司法書士から会社設立に関連する一連の書類が納品されます。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 会社の印鑑証明書
  • 定款
  • 会社の印鑑カード 他

これらの書類は、銀行口座開設や税務署への届出などに必要となります。

ステップ7:必要に応じて他士業と連携

会社設立後の税務・労務・社会保険手続きは、司法書士の業務範囲外です。必要に応じて、提携している税理士や社労士を紹介してもらえることもあります

  • 税務署への開業届・法人設立届出書
  • 社会保険・雇用保険の新規適用届
  • 顧問契約の案内を受けるケースもあり

まとめ

司法書士に会社設立を依頼することで、面倒な書類作成や登記手続きを専門家に任せることができ、時間と労力の大幅な削減につながります。一方で、出資金の払込や押印など、依頼者側が対応すべきステップもあるため、流れを理解しておくことがスムーズな設立につながります。