「親から相続した不動産が兄弟の共有名義になっている」
「夫婦で共有名義にした自宅を、離婚をきっかけに単独名義にしたい」
「共有者の一人が不動産を使っているが、共有名義のままでは将来の相続が心配」
このような場合、「共有名義を解消するにはどうすればいいのか」と悩む方は少なくありません。
不動産の共有は、共有者全員が納得している間は問題にならなくても、売却や相続、離婚、共有者の死亡などをきっかけにトラブルになることがあります。
共有名義を解消する方法には、共有者の一人が他の共有者の持分を取得する方法、不動産そのものを売却する方法、共有物分割の手続きを利用する方法などがあります。
この記事では、司法書士が不動産の共有名義を解消する代表的な方法と、手続きの際に注意したいポイントについて分かりやすく解説します。
共有名義とは?なぜ解消したほうがいいの?
共有名義とは、一つの不動産を複数の人が所有している状態です。
例えば、父親から土地と建物を相続し、長男と次男がそれぞれ2分の1ずつ所有している場合、その不動産は兄弟の共有名義となります。
また、夫婦で住宅を購入した際に夫と妻の共有名義にするケースもあります。
共有名義そのものが法律上問題になるわけではありません。しかし、共有者の一人だけの判断で不動産全体を売却することはできません。
そのため、共有者同士の意見が合わなくなると、不動産の処分や管理が難しくなります。
司法書士に相談されるケースでも、「今は問題ないけれど、将来の相続を考えて共有を解消したい」というご相談があります。
共有名義のまま相続するとさらに複雑になる
特に注意したいのが、共有者の一人が亡くなった場合です。
例えば、兄弟2人で共有していた不動産について、兄が亡くなり、その持分を兄の子ども3人が相続すると、共有者がさらに増える可能性があります。
共有者が増えるほど、売却や管理について話し合うことが難しくなります。
そのため、「いつか整理すればいい」と先延ばしにせず、共有者が元気で話し合いができるうちに、司法書士へ相談して共有関係を整理することが大切です。
共有名義を解消する代表的な4つの方法
共有名義を解消する方法は、一つではありません。
不動産の種類や共有者の希望、資金の有無などによって、適した方法が変わります。
方法1 共有者の一人が他の持分を買い取る
代表的なのが、共有者の一人が他の共有者の持分を取得する方法です。
例えば、兄弟2人が土地を2分の1ずつ所有している場合に、兄が弟の持分を買い取り、土地を兄の単独名義にします。
この方法であれば、不動産そのものを売却する必要がありません。
ただし、持分を取得するための代金が必要になります。また、持分の移転に伴って登記手続きも必要になります。
売買による持分移転登記については、司法書士に依頼するのが一般的です。
方法2 共有者の一人に持分を譲渡する
共有者間で話し合いがまとまれば、持分を無償で譲渡することも考えられます。
ただし、「お金をもらわないから単純に名義だけ変更すればいい」と考えるのは危険です。
無償で持分を取得した場合には、贈与として扱われ、贈与税が問題になる可能性があります。
また、不動産の取得に関する税金などが関係する場合もあります。
そのため、共有持分を譲渡する場合には、司法書士だけでなく、必要に応じて税理士などにも確認しながら進めることが重要です。
方法3 不動産を売却して共有を解消する
共有者全員が合意できるのであれば、不動産そのものを売却する方法もあります。
不動産を第三者に売却し、売却代金をそれぞれの共有持分に応じて分ければ、共有関係を解消できます。
例えば、兄弟が2分の1ずつ所有している不動産を売却した場合、原則として売却代金から必要な費用などを差し引いたうえで、それぞれの持分に応じて分配することになります。
この場合、不動産会社による売却手続きと並行して、司法書士が所有権移転登記などの手続きを担当します。
方法4 共有物分割を請求する
共有者同士で話し合いがまとまらない場合には、共有物分割という方法があります。
民法では、共有者は原則として共有物の分割を請求することができ、協議ができない場合には裁判所に共有物分割を請求することができます。現在の民法では、共有物を現物で分ける方法のほか、共有者の一人などに取得させて他の共有者に代償金を支払わせる方法、競売によって売却して代金を分ける方法などが制度上整理されています。
ただし、裁判による共有物分割は、当事者間の話し合いだけで解決する手続きとは異なります。
実際に共有物分割を検討する場合には、司法書士だけでなく、必要に応じて弁護士への相談も検討する必要があります。
共有名義を解消するときに司法書士が確認すること
共有名義の解消では、「名義を変更すれば終わり」と考えてはいけません。
司法書士に相談する場合には、まず不動産の登記内容を確認することから始めます。
誰がどの持分を持っているのか確認する
最初に確認するのは、現在の不動産の所有者と持分です。
相続を何度も繰り返している不動産の場合、本人たちが把握している共有者と、登記簿上の所有者が異なっていることもあります。
そのため、司法書士が登記事項証明書などを確認し、現在の権利関係を整理することが重要です。
共有者全員の意思を確認する
共有名義の解消では、誰がどのような方法で不動産を取得するのかを明確にします。
例えば、「長男が不動産を取得して、次男に持分の代金を支払う」という形で合意することもあります。
司法書士に相談することで、合意した内容を登記手続きにつなげるために必要な書類や手順を整理できます。
登記手続きを正確に行う
共有名義を解消する場合、売買や贈与などの原因に応じて所有権移転登記などを申請します。
不動産登記は、原因となる契約内容と登記内容が一致していることが重要です。
例えば、単純な「名義変更」と考えていたものが、実際には売買や贈与に該当することもあります。
司法書士に相談すれば、契約内容を確認したうえで、必要な登記手続きを検討してもらうことができます。
相続した不動産の共有名義は早めの整理がおすすめ
共有名義の問題で特に多いのが、相続によって発生した共有です。
兄弟姉妹で相続したものの、誰も住んでいない土地や実家をそのまま共有しているケースがあります。
最初は「とりあえず共有のままでいい」と考えていても、共有者の誰かが亡くなると、その持分についてさらに相続が発生します。
相続登記が未了のまま時間が経過すると、権利関係の整理が難しくなることもあります。
2024年4月からは相続登記が義務化されているため、相続によって不動産を取得した場合には、登記についても早めに確認することが大切です。
共有名義になっている相続不動産について、「売却するのか」「誰か一人が取得するのか」「共有のままにするのか」を早めに話し合い、必要に応じて司法書士へ相談しましょう。
共有名義の解消は司法書士に相談しましょう
共有名義を解消する方法は、共有者の一人による持分の買い取り、不動産全体の売却、持分の譲渡、共有物分割など、さまざまです。
どの方法が適しているかは、不動産の価値、共有者の人数、共有持分、住宅ローンの有無、相続や離婚など共有になった原因によっても変わります。
特に、共有者同士の話し合いがまとまっている場合でも、実際に登記をする段階で必要書類や税金などの問題が出てくることがあります。
「共有名義を解消したいけれど、何から始めればいいか分からない」という場合は、まず司法書士に現在の登記内容を確認してもらうとよいでしょう。
司法書士は、不動産登記の専門家として、共有持分の移転や相続登記など、共有名義の解消に必要となる登記手続きをサポートします。
共有名義の問題は、時間が経つほど共有者の死亡や相続によって複雑になることがあります。
将来のトラブルを防ぐためにも、共有者全員で話し合いができるうちに、司法書士へ早めにご相談ください。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号