不動産登記

外国人の不動産登記にはローマ字の併記が必要です|登記実務のポイント解説

なぜ、ローマ字併記が必要なのか?

近年、日本で不動産を取得する外国人が増えています。外国人の不動産取得の登記でポイントとなるのは、「外国人の登記名義人について、ローマ字による氏名の併記が必要になる」ことです。これは単なる形式的な話だけではなく、今後の登記実務において重要な意味を持ちます。

外国人による不動産取得の増加と実務上の課題

かつての不動産登記では、氏名の記載がカタカナや漢字に限定されることが多く、登記簿と本人のパスポートや外国の公的書類との間に表記の違いが生じることが少なくありませんでした。

たとえば、登記簿には「ジョン・スミス」とカタカナで記載されていても、本人のパスポートには「John A. Smith」と表記されており、同一人物であることの確認に時間がかかることがありました。これにより、売買などの手続きでトラブルや確認作業が増える原因となっていました。

登記の透明性と国際的整合性を高めるために

こうした問題を解消するため、日本の国籍を有しない者が所有権の登記名義人となる登記の申請をする場合は、氏名をローマ字で表示したもの(ローマ字氏名)も登記しなければならない、とする規定が新設され、令和6年4月1日に施行されました。これにより、登記簿に記載された名前と、各種証明書類に記載された名前との整合性が高まり、本人確認がよりスムーズに行えるようになります。

また、国際的な基準や他国との整合性を意識した制度運用も背景にあります。世界的に見ても、登記情報の正確性・透明性は不動産取引の信頼性を支える重要な要素であり、日本もそれに対応していく必要があるためです。

ローマ字併記の具体的なルールとは?

では、このローマ字併記には具体的にどのようなルールがあるのでしょうか。ここでは実務上知っておくべきポイントを整理して解説します。

使用するローマ字の形式は?

ローマ字併記にあたっては、原則としてパスポートなどの公的書類に記載された氏名表記をそのまま使うのが基本です。たとえば、パスポートに「John Alexander Smith」と表記されていれば、そのままの表記で登記簿に記載することになります。

略称や愛称は使えません。ミドルネームが記載されている場合は、それも省略せずに併記します。また、スペルミスがあると補正の対象になりますので、原本をしっかり確認することが重要です。

表記順序は「名 → 姓」が原則

日本では「姓 → 名」の順序が一般的ですが、ローマ字表記については、国際的な慣例に従い「名 → 姓」の順序で記載するのが原則です。たとえば、パスポートに「Michael Lee Chen」と記載されている場合、「Michael Lee」が名、「Chen」が姓であれば、その順序通りに登記にも反映します。

カタカナ表記との関係

登記簿には従来通りカタカナで氏名を記載しますが、それに加えてローマ字表記を併記します。これは、カタカナ名だけでは本人の特定が難しい場合に備えて、より正確な身元の裏付けを確保するための措置です。

例えば、「ジョン・スミス」というカタカナ表記の下に、括弧付きで「John Smith」と記載されるといった形式になります。これは登記簿謄本にもそのまま表示され、第三者による確認も容易になります。

一貫性と公的書類との整合性が重要

登記においてローマ字を併記する際は、他の契約書、身分証明書、パスポートなどの表記と整合性を保つことが非常に重要です。異なる表記があると、「別人扱い」となり、将来的な売却などの際に問題が生じる恐れがあります。

特に、登記名義人が将来、居住国での相続や財産証明を行う際、日本の登記簿との照合が求められるケースが多いため、ローマ字併記によって整合性を高めておくことは、実務上非常に重要です。

登記申請書への記載方法について

外国人が登記名義人となる不動産登記では、氏名のローマ字併記を正確に行うことが求められます。

登記申請書での氏名のローマ字併記は、カタカナで記載された氏名の直後に括弧書きでローマ字を記載します。

例えば、外国人名義人が「John Michael Smith」さんの場合、次のように記載します。

登記名義人氏名:「ジョン・マイケル・スミス(John Michael Smith)」

ちなみに、住所欄についても、本人確認書類との整合を考慮し、外国の住所を記載する場合は、英語表記とカタカナ表記の両方を用いるケースもあります(例:123 Main Street, New York, NY 10001 USA/アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市メインストリート123番地)。

まとめ

申請書への正確な記載、公的書類との整合性など、実務上の注意点は多くありますが、これらを丁寧に進めることで、手続き上のトラブルを未然に防ぐことが可能です。

安心して不動産取引を進めるために、正確な登記と信頼できるサポート体制が大切です。ローマ字併記の対応を含めた、スムーズな登記手続きのために、私たち司法書士が力になります。