法定相続情報とは?制度の基本概要
法定相続情報制度とは、相続に必要な戸籍書類を法務局に提出し、「法定相続情報一覧図」という書類を作成・交付してもらえる制度です。この制度により、相続手続きを行うたびに煩雑な戸籍一式を提出する必要がなくなり、手続きの簡素化・迅速化が図れます。
制度が作られた背景
これまでの相続手続きでは、相続人全員を証明するために被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍、さらに相続人全員の戸籍を何通も用意する必要がありました。
その都度、法務局や銀行、証券会社などに同じ書類を何度も提出しなければならず、時間も手間もかかるうえに、戸籍の内容が複雑な場合には手続きが進まないこともありました。
こうした手続き上の負担を軽減するために、法務局で「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出」をし、複数の「法定相続情報一覧図の写し」を交付を受ければ、それを各機関に提出するだけでよくなるという制度が導入されました。
法定相続情報一覧図とは何か?
「法定相続情報一覧図」とは、被相続人の相続関係を一覧にまとめた書類です。
この一覧図は、法務局で戸籍一式を確認した上で作成・認証されるため、公的な証明書類として取り扱われます。
一覧図には以下のような情報が記載されます:
- 被相続人の氏名・生年月日・死亡日・最後の住所・(最後の本籍)
- 相続人全員の氏名・続柄・生年月日・(住所)
※( )内は、任意です。
なお、この書類自体には遺産の分配内容(遺産分割協議の結果など)は反映されません。あくまで「誰が法定相続人であるか」を公的に証明するためのものです。
制度の利用は義務ではない
この制度の利用は任意であり、利用しなくても従来通りの相続手続きを行うことは可能です。ただし、複数の機関に相続手続きを行う必要があるケースでは、制度を利用することでかなりの時間短縮と負担軽減が期待できます。
活用される主なシーン
では、実際にこの制度がどのような場面で活用されているのか、代表的なケースをご紹介します。
金融機関の相続手続き
銀行口座や証券口座の名義人が亡くなった場合、相続人は各機関に戸籍一式を提出して相続手続きを行う必要があります。このとき、「法定相続情報一覧図の写し」を提出すれば、戸籍の代わりとして使用可能なため、複数の銀行口座や証券会社の手続きを一括して進める際に便利です。
不動産の相続登記
不動産の名義変更(相続登記)は法務局で行いますが、こちらでも一覧図を使うことができます。相続登記の義務化(2024年4月施行)に伴い、手続きの効率化が求められる中、法定相続情報制度の活用はますます重要になっています。
税務署への相続税申告
相続税の申告には、相続人の関係を示す資料が必要です。法定相続情報一覧図は、相続人の構成が一覧で分かる公的資料として、税務署への説明にも役立ちます。
取得までの流れと手続きの進め方
法定相続情報一覧図を取得するための手続きは、基本的に ①必要書類の取得・作成 → ②法務局への申出 → ③交付 という3つのステップで進みます。
一見すると複雑に感じるかもしれませんが、あらかじめ準備を整えておけば、スムーズに申請できます。以下では、具体的な手順と注意点を詳しく解説します。
ステップ1:必要書類をそろえる
以下の書類を市町村役場にて取得します。
- 被相続人の戸籍一式(出生から死亡まで)
- 住民票除票 又は 戸籍の附票(被相続人の住所確認用)
- 相続人全員の戸籍
- 相続人全員の住民票(任意、住所を記載する場合は必要)
- 相続人(申出人)の住所・氏名を確認できる公的書類(免許証、マイナンバーカード、住民票などのコピー)
以下の書類を作成します。
- 法定相続情報一覧図
- 申出書
※書式に関しては、法務局のホームページを参照下さい。
ステップ2:法務局に申出を行う
必要書類がすべて揃ったら、法務局に申出を行います。
提出先の法務局
申請は、以下のいずれかの法務局で行うことができます。
- 被相続人の本籍地を管轄する法務局
- 被相続人の最後の住所地を管轄する法務局
- 相続人の住所地を管轄する法務局
- 被相続人名義の不動産所在地を管轄する法務局
※申請は窓口での提出だけでなく、郵送による申出も可能です。
ステップ3:一覧図の写しが交付される法務局が書類内容を確認し、問題がなければ 「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。
- 法定相続情報一覧図の写しには、法務局の認証文と押印が入ります。
- 申請後、通常は1~2週間程度で交付されることが多いです(窓口か郵送で受け取り)。
この「法定相続情報一覧図の写し」を使って、各種相続手続きを進めることができます。
注意点
- 一覧図の内容にミスがあると再提出が必要になります。提出前に誤字や続柄の誤りがないか、必ず確認しましょう。
- 郵送申請の場合は、返信用封筒や連絡先の記載忘れに注意。
- 一覧図には「相続人の住所」を記載するか選べますが、住所を記載したほうが金融機関等での手続きがスムーズなケースが多いです。