「親が元気なうちに、相続について何を聞いておけばいいの?」
相続は、親が亡くなった後に初めて考えればよいと思われがちですが、実際には、生前に家族で確認しておくだけで相続手続きが大幅に進めやすくなることがあります。
相続では、不動産、預貯金、保険、借入金などの財産を調査し、相続人を確認したうえで、遺産分割協議や相続登記など、さまざまな手続きを進める必要があります。
ところが、親しか知らない財産や契約があると、相続人が後から調査しなければならず、相続手続きが長引く原因になります。
そこで今回は、司法書士が「親が元気なうちに聞いておきたい10個の質問」を紹介します。
親に聞いておくと相続が楽になる10個の質問
1.不動産を持っている?
まず確認しておきたいのが、不動産の有無です。
自宅だけでなく、土地、アパート、マンション、別荘、農地、山林などを所有していないか聞いておきましょう。
不動産の所在地が分からないと、相続が発生した後に財産調査をするのが大変になることがあります。
固定資産税の納税通知書や権利証、登記識別情報などの保管場所も確認しておくと、相続登記を進める際に役立ちます。
2.預貯金はどこの金融機関にある?
銀行や信用金庫など、利用している金融機関を確認しておきましょう。
口座番号まで暗記しておく必要はありませんが、「どこの銀行に口座があるのか」が分かるだけでも、相続後の財産調査が楽になります。
インターネット銀行など、通帳が発行されない口座についても確認しておくことが大切です。
3.生命保険には加入している?
生命保険は、相続手続きの際に重要になることがあります。
保険会社の名前や保険証券の保管場所、契約者、被保険者、受取人などを確認しておきましょう。
生命保険金は、契約内容によって相続財産としての扱いが異なるため、相続税などについては専門家への確認が必要です。
4.借金やローンはある?
相続で忘れてはいけないのが、プラスの財産だけではなくマイナスの財産です。
住宅ローン、カードローン、金融機関からの借入れ、個人からの借金などがないか確認しておきましょう。
借金があることを知らずに相続手続きを進めると、後から思わぬ問題が発生する可能性があります。
相続では、財産を受け継ぐだけでなく、借金などの債務も相続の対象となる場合があります。
5.遺言書を作っている?
「遺言書を作っているか」という質問も非常に重要です。
遺言書がある場合とない場合では、相続手続きの進め方が大きく変わることがあります。
公正証書遺言を作成している場合は、公証役場で作成したことを確認しておきましょう。
自筆証書遺言の場合には、どこに保管しているのかを確認しておくことも大切です。
ただし、内容を家族にすべて伝えるかどうかは、親本人の意思を尊重して考える必要があります。
6.誰に財産を残したい?
親が「誰に何を残したい」と考えているのかを、できる範囲で聞いておくことも大切です。
相続では、財産の分け方について相続人同士で意見が対立することがあります。
例えば、「自宅は長男に残したい」「預貯金は子どもたちで公平に分けたい」といった親本人の希望が分かっていれば、相続が発生した後の話し合いを進める際の参考になります。
もっとも、口頭での希望と法的に有効な遺言書は別のものです。
具体的な希望がある場合には、司法書士などに相談しながら遺言書の作成を検討するとよいでしょう。
7.通帳や重要書類はどこに保管している?
相続が発生すると、相続人はさまざまな書類を探すことになります。
通帳、印鑑、保険証券、不動産関係書類、年金関係書類、契約書などの保管場所を確認しておきましょう。
ただし、キャッシュカードの暗証番号など、重要な情報の取り扱いには十分注意してください。
「何がどこにあるか」を整理しておくだけでも、相続人の負担を減らすことができます。
8.毎月支払っている契約やサービスはある?
携帯電話、インターネット、動画配信サービス、クレジットカードなど、毎月料金が発生する契約も確認しておきましょう。
相続が発生すると、こうした契約の解約や名義変更が必要になる場合があります。
特にインターネット上だけで管理しているサービスは、家族が存在を把握できないことがあります。
相続手続きを円滑にするためにも、利用しているサービスを一覧にしておくと安心です。
9.親族関係で、相続に関係しそうなことはある?
相続では、家族が把握していなかった親族関係が問題になることがあります。
例えば、以前の結婚、認知した子、養子縁組などがある場合、相続人の範囲に影響する可能性があります。
相続では戸籍を調査して相続人を確定しますが、生前に親から聞いておくことで、相続開始後の調査がスムーズになる場合があります。
聞きにくい内容であっても、相続手続きを進めるうえでは重要な情報になることがあります。
10.これからの生活や介護についてどう考えている?
最後に確認しておきたいのが、相続そのものだけではなく、親自身のこれからの生活についてです。
「介護が必要になったらどうしたいか」「自宅をどうしたいか」「施設に入る場合はどうするか」などを話しておくことは、将来の財産管理を考えるうえでも重要です。
相続対策というと、亡くなった後の財産分けだけを考えがちですが、認知症などによって判断能力が低下すると、不動産の売却や預貯金の管理が難しくなることがあります。
そのため、相続だけではなく、成年後見制度や任意後見制度なども含めて、早めに司法書士へ相談することが有効です。
親への質問は「相続のため」ではなく家族の将来のため
「親に相続の話をするのは気が引ける」という方も多いでしょう。
その場合は、いきなり財産の金額を聞くのではなく、「もしものときに困らないように、重要な書類の場所だけ教えてほしい」といったところから始めると話しやすくなります。
相続について親子で話し合うことは、単に相続財産を確認するためだけではありません。
親がどのような人生を送りたいのか、今後どのような生活を希望しているのかを家族で共有する機会にもなります。
相続の準備は司法書士に相談できます
相続では、亡くなった後に初めて分かる問題も少なくありません。
不動産の場所が分からない、預貯金の口座が見つからない、借金があることを知らなかった、遺言書が見つからないなど、情報不足によって相続手続きが複雑になることがあります。
だからこそ、親が元気なうちに少しずつ確認しておくことが大切です。
司法書士は、相続登記をはじめ、遺言書の作成支援や成年後見など、相続に関係するさまざまな手続きをサポートしています。
「何から親に聞けばいいか分からない」「相続について家族で話し合っておきたい」という場合でも、司法書士に相談することで、現在の状況に応じて準備しておくべきことを整理できます。
相続は、実際に発生してから準備を始めるよりも、親が元気なうちから少しずつ備えておくことで、相続人の負担を大きく減らせる可能性があります。
将来の相続を円滑に進めるためにも、まずは家族でできるところから話し合ってみてはいかがでしょうか。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号