「相続トラブルはお金持ちの家庭だけの問題」
そのように考えている方は少なくありません。
しかし、実際に相続相談を受けている司法書士の現場では、むしろ「財産が少ない家庭ほど相続でもめる」というケースが多く見られます。
特に、
- 実家しか財産がない
- 預貯金が少ない
- 遺言書を作っていない
- 介護負担に差がある
といった家庭では、相続人同士の感情的な対立が起こりやすくなります。
今回は、なぜ財産が少ない家庭ほど相続トラブルが起こりやすいのか、その理由と対策について司法書士の視点から解説します。
財産が少ない家庭ほど相続トラブルが起きやすい理由
「うちは相続するほど財産がないから大丈夫」
この考え方は、実は非常に危険です。
家庭裁判所の遺産分割調停でも、比較的少額の遺産をめぐる争いは珍しくありません。
相続財産が少ない家庭では、限られた財産をどう分けるかで不公平感が生まれやすく、感情的な対立につながるケースが多くあります。
特に次のようなケースでは注意が必要です。
- 不動産しか相続財産がない
- 相続人同士の関係に温度差がある
- 生前贈与や援助に差がある
- 介護負担が偏っている
- 遺言書が存在しない
不動産しかない相続は揉めやすい
実家をどう分けるかで対立しやすい
相続相談で特に多いのが、「実家をどうするか」という問題です。
たとえば、
- 預貯金:300万円
- 実家不動産:2,000万円
というケースでは、不動産を公平に分けることが簡単ではありません。
現金であれば均等に分配できますが、不動産は簡単に分割できないため、
- 誰が実家を相続するのか
- 売却するのか
- 同居していた相続人をどう扱うのか
などで意見が対立しやすくなります。
司法書士への相談でも、
「兄は住み続けたいと言っている」
「自分は売却して現金化したい」
といった相談は非常に多くあります。
相続登記を放置すると問題が深刻化する
相続でもめた結果、不動産の名義変更である相続登記を放置してしまうケースも少なくありません。
しかし、相続登記を放置すると、
- 相続人が増える
- 権利関係が複雑になる
- 不動産売却が難しくなる
- 次世代までトラブルが続く
といった問題が発生します。
2024年からは相続登記が義務化されており、正当な理由なく放置すると過料の対象になる可能性もあります。
そのため、早めに司法書士へ相談することが重要です。
「平等に分けたい」が争いの原因になることも
財産が少ない相続では、わずかな差額でも不公平感につながりやすくなります。
たとえば、
- 長男だけ住宅購入資金の援助を受けていた
- 長女が親の介護を担っていた
- 同居していた相続人がいた
など、金額以上に感情面での不満が表面化するケースが多くあります。
実際の相続相談でも、
「お金の問題というより気持ちの問題」
と話される相続人は少なくありません。
相続は単なる財産分配ではなく、家族関係や長年の感情が表れる場でもあるのです。
遺言書がないと相続トラブルは起こりやすい
「家族仲が良いから大丈夫」は危険
司法書士として相続相談を受けていると、家族仲が良い家庭ほど遺言書を作成していない傾向があります。
しかし、相続が発生すると、それぞれの事情や生活状況によって考え方が変わります。
- 住宅ローンがある
- 教育費が必要
- 老後資金に不安がある
など、立場の違いから意見が対立することは珍しくありません。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
一人でも反対すると手続きが進まなくなるため、トラブルに発展しやすくなります。
遺言書があるだけで防げる争いは多い
適切に作成された遺言書があることで、
- 財産の分け方を明確にできる
- 被相続人の意思を残せる
- 相続人同士の話し合い負担を減らせる
というメリットがあります。
特に不動産相続では、遺言書の有無によって手続きの難易度が大きく変わります。
司法書士へ相談し、公正証書遺言を活用することで、将来的な相続トラブルの予防につながります。
介護負担の不公平感が“争族”につながる
相続トラブルで非常に多いのが、介護負担への不満です。
たとえば、
という場合、介護を担った相続人が「多めに相続したい」と考えることがあります。
一方で、他の相続人は「法律上は平等に分けるべき」と主張するため、話し合いが難航しやすくなります。
こうしたケースでは、寄与分や特別受益の整理が必要になることもあり、司法書士など専門家への相談が有効です。
相続トラブルを防ぐには生前対策が重要
相続でもめないためには、「亡くなってから」ではなく「生前から準備すること」が重要です。
司法書士へ事前に相談することで、
- 遺言書作成
- 家族信託
- 生前贈与
- 不動産整理
- 相続登記対策
など、家庭の状況に応じた対策が可能になります。
特に不動産を所有している家庭では、事前対策の有無によって相続手続きの負担が大きく変わります。
まとめ|「財産が少ないから安心」は危険
相続トラブルは、資産家だけに起こる問題ではありません。
むしろ、
- 不動産中心の相続
- 預貯金が少ない
- 遺言書がない
- 介護負担に差がある
といった家庭ほど、相続で揉めやすい傾向があります。
「うちは財産が少ないから大丈夫」と考えている方こそ、早めの相続対策が重要です。
司法書士へ相談することで、相続登記だけでなく、将来の“争族”を防ぐための具体的な対策も可能になります。
大切な家族関係を守るためにも、今のうちから相続について考えてみてはいかがでしょうか。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号