「遺言書を作成したことを家族に伝えておいたほうがいいですか?」
遺言書を作成する際、司法書士への相談でよくある質問の一つです。
せっかく遺言書を作成しても、亡くなった後に家族がその存在を知らなければ、遺言書が発見されない可能性があります。一方で、遺言書の内容を生前に家族へ伝えたことで、相続財産の分け方をめぐって家族間のトラブルが起こるケースもあります。
では、遺言書を書いたことを家族に伝えるべきなのでしょうか。
この記事では、司法書士が、遺言書を作成したことを家族に伝えるメリットや注意点、伝える場合に知っておきたいポイントについて解説します。
遺言書を書いたことを家族に伝えるべき?
結論として、遺言書を作成した事実や保管場所については、信頼できる家族に伝えておくことをおすすめします。
ただし、遺言書の具体的な内容まで伝える必要があるとは限りません。
ここは非常に重要なポイントです。
「遺言書を書いたことを伝えること」と「遺言書に何を書いたのかを伝えること」は、別の問題として考える必要があります。
例えば、
「遺言書を作成している」
「亡くなったときに確認できるようにしてある」
「法務局に保管している」
ということだけを家族に伝えておき、財産を誰にどの程度相続させるのかという具体的な内容については伝えない方法もあります。
司法書士に遺言書の作成を相談する際には、家族関係や財産の内容も踏まえて、どこまで伝えるのが適切なのかを検討するとよいでしょう。
家族に遺言書の存在を伝えるメリット
遺言書を作成したことを家族に伝えておく最大のメリットは、相続が開始した後に遺言書を発見してもらいやすくなることです。
遺言書が見つからない事態を防ぎやすい
自筆証書遺言の場合、自分で作成した遺言書を自宅などで保管することがあります。
しかし、本人が亡くなった後、家族が遺言書の存在を知らなければ、遺言書を探すこと自体ができません。
例えば、机の引き出しや金庫、書類棚などに保管していたとしても、家族がその場所を知らなければ、遺言書が発見されないまま相続手続きが進んでしまう可能性があります。
「遺言書を作った」ということだけでも家族に伝えておけば、相続が発生したときに遺言書を探すきっかけになります。
相続手続きをスムーズに進めやすくなる
遺言書があることが分かっていれば、相続開始後にその内容を確認したうえで、必要な相続手続きを進めることができます。
特に不動産の相続登記など、司法書士が関わる相続手続きでは、遺言書の有無が手続きの方向性に影響することがあります。
そのため、遺言書の存在や保管場所を明らかにしておくことは、残された家族にとっても重要です。
遺言書の内容は家族に伝えなくてもいい?
遺言書を作成したことを家族に伝える一方で、遺言書の内容については伝えないという選択もできます。
むしろ、家族関係によっては、内容を生前に伝えないほうがよい場合もあります。
財産の分け方をめぐってトラブルになることも
例えば、「長男に自宅を相続させる」「次男には預貯金を相続させる」といった内容の遺言書を作成したとします。
その内容を生前に家族へ伝えたところ、「なぜ自分の取り分が少ないのか」「その分け方には納得できない」といった不満が出る可能性があります。
もちろん、生前に家族で十分に話し合うことで、相続発生後のトラブルを防げる場合もあります。
しかし、すべての家庭で話し合いがうまくいくとは限りません。
特定の相続人に多くの財産を相続させる場合や、相続人以外の人に財産を残す場合などは、特に慎重な判断が必要です。
司法書士に相談しながら、遺言書の内容と家族への伝え方を別々に検討することをおすすめします。
「遺言書の存在」と「保管場所」は伝えておく
家族に遺言書について伝えるのであれば、少なくとも「遺言書がある」ということに加えて、どこに保管しているのかを伝えておくと安心です。
例えば、自宅の金庫に保管している場合には、その場所を信頼できる家族に知らせておきます。
また、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用する方法もあります。
この制度では、自筆証書遺言を法務局に保管してもらうことができます。遺言書の紛失や改ざんなどのリスクを抑えられるほか、相続開始後に相続人等が遺言書の内容を確認するための手続きを利用できます。
司法書士に相談する場合には、自分の希望に合った遺言書の種類や保管方法についても確認しておくとよいでしょう。
家族に伝えるなら、どこまで伝える?
遺言書について家族に話す場合、何もかも説明しなければならないわけではありません。
例えば、次のような段階に分けて考えることができます。
まずは「遺言書を作成した」と伝える
最初に伝えるのは、「遺言書を作成している」という事実だけでも構いません。
「将来、相続手続きで困らないように遺言書を作ってある」と伝えるだけでも、家族にとっては大きな手がかりになります。
次に「保管場所」を伝える
自宅で保管している場合は、その場所を伝えておきます。
法務局に保管している場合には、「法務局に遺言書を預けている」と伝えておくことが重要です。
また、遺言書を作成する際に司法書士へ相談した場合には、司法書士に相談していることを伝えておくことも一つの方法です。
「内容を伝えるか」は家族関係を見て判断する
遺言書の内容まで伝えるかどうかは、家族関係や財産の状況によって判断しましょう。
家族で相続について話し合える関係であれば、遺言書の内容を共有することが、将来のトラブル防止につながることもあります。
反対に、相続人同士の関係が良好でない場合などには、内容を生前に知らせることで問題が大きくなる可能性もあります。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号