離婚後の財産分与とは?
離婚をする際、避けて通れないのが「財産分与(ざいさんぶんよ)」の問題です。これは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を、離婚時に公平に分けるための制度であり、法律によって定められた重要な権利です。ここでは、財産分与の基本的な考え方と、法律上どのように位置づけられているのかを詳しくご説明します。
財産分与の法的根拠とは
財産分与は、民法768条に規定されています。この条文では、離婚に際して「当事者の一方は、他の一方に対して財産の分与を請求することができる」と明記されています。つまり、離婚する夫婦のどちらかが、もう一方に対して、婚姻期間中に築いた共有財産の分配を求めることができるというわけです。
なお、財産分与は離婚届を提出する前でも話し合うことが可能ですが、通常は離婚成立後に請求されることが多く、離婚から5年以内に行う必要があります。
財産分与の対象になる財産とは?
財産分与の対象となるのは、夫婦が婚姻中に協力して築いた「共有財産」です。これは名義にかかわらず、実質的に夫婦の協力によって形成された財産すべてが対象になります。
例としては以下のようなものがあります:
- 現金・預貯金(名義は問わない)
- 不動産(土地・建物など)
- 自動車
- 株式・投資信託などの金融資産
- 退職金(一定の条件下で)
一方で、「特有財産」と呼ばれる財産は分与の対象外とされています。たとえば、次のような財産です。
- 結婚前から持っていた個人の財産
- 相続や贈与によって取得した財産(婚姻中であっても) など
財産分与の3つの類型とは?
財産分与には、次の3つの類型があることを理解しておくことが重要です。
1. 清算的財産分与
最も基本的な類型であり、夫婦が婚姻期間中に築いた財産を公平に分け合うものです。原則として、どちらかが多く貢献したかではなく、50:50で分けることが基本とされます。
2. 扶養的財産分与
離婚後に生活が困窮する一方に対して、一定期間経済的な援助を目的として行う財産分与です。主に専業主婦(主夫)であった場合などに考慮されます。
3. 慰謝料的財産分与
相手の不貞行為や暴力など、離婚原因が一方にある場合に、その損害賠償的な意味合いを含めて財産分与が行われるケースです。慰謝料との性質が重なることもありますが、形式上は財産分与として整理されることがあります。
財産分与は話し合いが基本
財産分与の内容は、まず夫婦間の「協議(話し合い)」によって決めるのが原則です。話し合いで合意できた場合は、その内容を「離婚協議書」などに書面化しておくと後のトラブルを防げます。
もし協議が整わない場合には、家庭裁判所の「調停」や「審判」を利用して、第三者の関与のもとで解決を図ることになります。
なぜ登記が必要なのか?不動産に関わる財産分与と登記手続きの関係
離婚後の財産分与において、不動産が含まれている場合には「登記(とうき)」という手続きが欠かせません。登記は、単に名義を変えるだけではなく、法律的にその財産を「自分のもの」と主張するために必要不可欠な手続きです。
ここでは、なぜ登記が必要なのか、どのような法律的意味があるのかを詳しく解説します。
登記とは?不動産における権利の“公的な証明”
不動産の登記とは、土地や建物などの不動産に関する権利(所有権・抵当権など)を、法務局の登記簿に記録する手続きです。
この手続きにより、「誰がこの不動産を所有しているのか」「いつ、どんな理由で所有権が移転したのか」といった情報が、誰でも確認できるようになります。つまり、登記は不動産の所有権を公に証明する「対外的な証拠」なのです。
なぜ財産分与後に登記が必要なのか?
離婚により財産分与が成立した場合、たとえ話し合いや離婚協議書で「不動産を妻に渡す」「夫が単独名義にする」などと決めたとしても、それだけでは第三者に対して所有権を主張できません。
実際に名義変更の登記を行って、初めて「法律上の権利者」として認められます。
登記をしないとどうなる?よくあるトラブル例
ケース1:第三者に売却されてしまった
名義変更をせずに放置していたところ、元配偶者が勝手にその不動産を第三者に売却。買主が登記を済ませてしまったため、取り戻すことが困難に。
ケース2:相続時に争いが起きた
元配偶者が亡くなった際、登記名義がそのままだったため、元配偶者の相続人がその不動産を「相続財産」として主張。子どもたちとの間で法的トラブルに発展。
このような問題は、登記を怠ったことが原因です。書面だけでは法的に弱く、登記をもってはじめて権利が確定すると言えます。
財産分与による所有権移転登記の流れ
離婚後の財産分与に伴う登記は、通常以下の流れで進みます。
- 財産分与に関する協議成立
離婚協議書や公正証書などで、財産分与の内容を明記します。 - 必要書類の準備
登記原因証明情報(協議書等)、戸籍謄本、不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書などを用意します。 - 登記申請書の作成 ※書式については、法務局のホームページをご参照下さい。
- 法務局に登記申請
管轄の法務局に、登記申請をします。 - 登記完了後、新しい名義人に変更
登記簿に反映され、新たな名義人として正式に登録されます。
登録免許税
財産分与による登記には、登録免許税(原則:固定資産税評価額の2%)がかかります。
まとめ:財産分与後は必ず「登記」で名義を変更しましょう
離婚後の不動産の財産分与では、登記をしなければ法的に所有権が認められません。話し合いや書面で合意していても、登記をしなければトラブルの火種を残すことになります。
確実かつスムーズに手続きを進めるためにも、専門家である司法書士に相談しながら、早めに登記を行うことを強くおすすめします。