相続

【司法書士が解説】遺産分割で“揉めやすい家族構成”ベスト3|相続トラブルを防ぐために知っておくべきポイント

相続の手続きは、家族の絆を試す場面とも言われます。
「うちは仲がいいから大丈夫」と思っていても、実際に遺産分割の場面になると、思いもよらないトラブルに発展するケースが少なくありません。

司法書士として多くの相続案件に携わってきた経験から、特に揉めやすい家族構成にはいくつかの共通点があります。
この記事では、相続トラブルが起きやすい家族構成を「ベスト3」として紹介し、その原因と対策を詳しく解説します。


【第3位】再婚・連れ子のいる家族構成の相続

複雑な家族関係が相続手続きに影響

再婚家庭や連れ子がいる場合、法定相続人の範囲が複雑になりがちです。
例えば、夫が再婚し、前妻との子どもがいる場合、その子どもにも相続権が発生します。

「再婚後に築いた家庭だけで話を進めたい」と思っても、法律上は前妻の子どもも含めた全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
このため、連絡が取れない・感情的に話ができないといった問題が起きやすいのです。

トラブルの典型例

  • 前妻の子と現妻の間で話し合いがまとまらない
  • 亡くなった方の財産がどこまで「婚姻後の財産」か不明確
  • 相続人の一部が海外在住・音信不通

防ぐための対策

  • 遺言書の作成を生前に行う
  • 相続人の範囲を明確にしておく
  • 専門家(司法書士・弁護士)に早めに相談する

【第2位】兄弟姉妹のみが相続人となるケース

「遠慮がない関係」がトラブルの火種に

両親が亡くなり、子どもがいない場合、相続人は兄弟姉妹となります。
しかし、兄弟姉妹の間では「昔の感情」「不公平感」「疎遠さ」などが相続に影響することが多く、話し合いが難航することも少なくありません。

よくある相続トラブルの例

  • 長男が親の面倒を見ていたため「自分が多くもらうべき」と主張
  • 遺産の中に実家があり、「売却」か「誰が住むか」で揉める
  • 相続登記を誰が行うかで責任を押し付け合う

特に、不動産の相続では「共有名義」にしてしまうと、後々の売却や管理で意見が合わず、トラブルが長期化する傾向があります。

解決のためのポイント

  • 可能な限り不動産を単独名義にする
  • 代償分割(現金で精算)を検討する
  • 相続登記は早めに司法書士へ依頼する

兄弟姉妹間の相続は「感情的な争い」に発展しやすい分、冷静な第三者が介入することで、円満解決がしやすくなります。


【第1位】親が亡くなり、子どもが複数いるケース

最も多い!典型的な相続トラブル

相続トラブルで最も多いのが、両親が亡くなり、子どもたちが相続人となるケースです。
一見シンプルな家族構成ですが、実はこのタイプが最も揉めやすいといわれています。

相続で揉める原因

  • 遺言書がないため、話し合いがゼロからスタート
  • 不動産が主な遺産で、現金が少ない
  • 「介護していた」「仕送りしていた」などの貢献度を巡る争い
  • 相続税や名義変更に関する知識の差

また、実家を誰が引き継ぐかという問題も深刻です。
「長男が住みたい」「他の兄弟は現金がほしい」と意見が割れ、感情的な対立に発展するケースが後を絶ちません。

相続トラブルを防ぐための対策

  • 公正証書遺言を作成し、分配の方針を明確にする
  • 財産の内容(不動産・預貯金・株式など)を整理しておく
  • 早めに相続登記を済ませ、名義をはっきりさせる

司法書士に相談することで、法的な相続手続きだけでなく、家族間の調整にもサポートが得られます。


相続トラブルを防ぐためにできること

1. 遺言書を準備する

最も有効な相続対策は、やはり遺言書の作成です。
誰に・どの財産をどのように相続させるかを明確にしておくことで、相続人同士の話し合いが不要になり、感情的な衝突を防ぐことができます。
特に不動産や事業資産など分けにくい財産がある場合は、公正証書遺言を作成しておくと安心です。
遺言書の内容を定期的に見直し、家族構成や財産内容の変化に対応させておくことも大切です。

2. 財産を“見える化”する

相続で揉める大きな原因の一つが、「財産の全体像が把握できていない」ことです。
預貯金、不動産、保険、株式、借入金など、すべてを一覧表にまとめておくことで、相続人が混乱せずに手続きを進められます。
また、財産の所在が明確になることで、相続税の申告漏れや二次相続のトラブルも防げます。
エンディングノートや財産目録を活用し、生前から整理しておくのが効果的です。

3. 専門家に相談する

相続には法律・税金・登記など、専門的な知識が欠かせません。
インターネットの情報だけで判断してしまうと、思わぬリスクを見落とすことがあります。
司法書士に相談すれば、相続登記遺産分割協議書の作成などの法的手続きがスムーズに進み、相続人間のトラブルも未然に防ぐことが可能です。
さらに税理士や行政書士と連携することで、相続税の節税や遺留分対策も含めた総合的なサポートが受けられます。
相続は「亡くなってから」ではなく、「元気なうちから」備えることが何より重要です。


まとめ|相続は「早めの準備」と「専門家への相談」がカギ

相続トラブルは、決して特別な家庭だけの問題ではありません。
むしろ、一般的な家族構成ほど揉めやすいのが現実です。

再婚家庭、兄弟姉妹の相続、複数の子どもがいるケース——。
いずれも、少しの誤解や感情の行き違いが大きな争いに発展する可能性を秘めています。

司法書士は、相続登記・遺言書作成・遺産分割協議書の作成などを通じて、
「円満な相続」の実現をサポートしています。

相続に関して少しでも不安を感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。
早めの一歩が、大切な家族を守る最善の相続対策になります。

<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階