遺言書を作成する目的は、ご自身の財産を「希望通りに」遺すためです。ですが、現実には、受遺者が先に亡くなっていたり、想定していた状況と異なることが起きることもあります。
そんな「想定外」の事態に備える方法として注目されているのが「予備的遺言」です。
この記事では、司法書士の視点から、予備的遺言の基本的な知識やメリット、作成時の注意点をわかりやすくご説明します。
予備的遺言とは何か?
予備的遺言の定義と役割
予備的遺言とは、遺言書において、第一に指定した相続人や受遺者が遺言者の死亡時にすでに亡くなっていた場合などに備えて、第二の受取人を指定しておく内容のことを指します。
例えば、次のような内容です。
「私の全財産を妻〇〇に相続させる。ただし、私の死亡時に妻〇〇がすでに死亡している場合には、長女△△に相続させる。」
このように、条件に応じて別の相続先を明示しておくことで、遺言の実現性を高めることができるのです。
なぜ必要なのか?
一般的な遺言書では、財産の分け方や相続人を明確に指定しますが、その人が先に亡くなってしまった場合、その部分の遺言は無効になってしまいます。これでは、せっかく考え抜いた遺言の内容が一部失われ、法定相続に従って分割されるリスクがあります。
予備的遺言を記載しておけば、このような「もしも」の状況でも、遺言の趣旨を維持することが可能です。
予備的遺言の具体例
予備的遺言は、さまざまなパターンで活用できます。ここでは、よくある例をご紹介します。
相続人が先に死亡しているケース
「自宅不動産を長男に相続させる。ただし、長男が私よりも先に死亡している場合には、次男に相続させる。」
このように、第一受取人が不在の場合に、第二受取人へと引き継ぐ内容を明確にすることが重要です。
受遺者が相続人ではない場合
「知人○○に現金100万円を遺贈する。ただし、○○が私の死亡時に生存していない場合は、その配偶者△△に遺贈する。」
受遺者が相続人でない場合でも、代わりの人を指定しておけば、遺贈が無効になるのを防げます。
予備的遺言のメリットとは?
予備的遺言には、次のようなメリットがあります。
1. 遺言の内容が無効になるリスクを減らせる
受取人が死亡していた、という理由だけで遺言の一部が無効になるのは、避けたいところです。予備的遺言を記載しておくことで、法的リスクを軽減できます。
2. 法定相続を回避しやすくなる
遺言書が無効になった部分については、法定相続が適用されます。予備的な指定をしておくことで、自分の意思を反映した形で相続を進めやすくなります。
3. 相続トラブルの防止につながる
誰が何をもらうかが明確でないと、相続人同士のトラブルが起きやすくなります。予備的遺言は、相続トラブルを未然に防ぐための大きな武器になります。
予備的遺言を書く際の注意点
予備的遺言を含めた遺言書を作成する際は、以下のようなポイントに注意が必要です。
法的に有効な形式で書くこと
予備的遺言も、通常の遺言と同様に法的な要件を満たす必要があります。
曖昧な表現を避けること
予備的な内容はとくに条件付きになるため、表現が曖昧だと誤解を招きやすくなります。例えば、
「もし〇〇がいなければ、××に相続させる」
といった曖昧な書き方ではなく、
「〇〇が私の死亡以前に亡くなっている場合は、××に相続させる」
のように、具体的かつ明確な言い回しを心がけましょう。
他の相続人とのバランスにも配慮
予備的遺言によって、ある相続人が遺産を多く得る可能性がある場合、他の相続人から「遺留分侵害」の主張が出ることもあります。遺留分に配慮した内容にすることも大切です。
予備的遺言を公正証書で作成するのがおすすめ
予備的遺言を含む遺言書は、公正証書遺言として作成することを強くおすすめします。
公正証書遺言であれば、次のようなメリットがあります。
- 公証人が遺言書を作成するため、形式不備が起きにくい
- 原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配がない
- 家庭裁判所の検認が不要なので、相続開始後にスムーズに手続きできる
予備的遺言のような条件付きの複雑な内容でも、公証人と司法書士が連携して作成すれば、安心です。
まとめ|予備的遺言で“想定外”に備える安心を
予備的遺言は、通常の遺言ではカバーしきれない「想定外の事態」に備えるための、大切な手段です。
- 相続人が先に亡くなっていた場合
- 受遺者に相続できない理由がある場合
- 想定外の事情で遺言の一部が無効になる場合
こうしたリスクに対して、予備的な受取人を指定しておくことで、遺言の効力を維持することができます。
自分の思いを確実に実現するためには、予備的遺言も含めて、しっかりとした遺言書を準備することが重要です。
相続・遺言のご相談は当司法書士事務所へ
当事務所では、相続や遺言に関する豊富な実務経験を活かし、お客様一人ひとりに最適なアドバイスをご提供しています。
予備的遺言についても、内容の検討から公正証書遺言の作成支援まで、トータルでサポートいたします。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階