はじめに:相続登記での「共有名義」、本当に安心ですか?
相続によって不動産を兄弟で共有名義にするケースは少なくありません。
「公平に分けたい」「売るつもりはないから共有でいい」といった思いから、共有名義を選ぶ方も多いでしょう。
しかし、相続の現場では“共有名義にしたことを後悔した”という声が非常に多いのが実情です。
本記事では、司法書士として実際に見てきた「兄弟で共有名義にして後悔した実例」をもとに、
相続トラブルの原因と、その回避策について詳しく解説します。
兄弟で不動産を共有名義にした実例とその後のトラブル
共有名義の不動産をめぐる典型的な相続トラブル
あるご家庭では、父親の死後、実家を兄弟二人で相続し、持分を「1/2ずつ」の共有名義にしました。
当初は仲の良い兄弟で、「売る予定もないから共有でいい」と話がまとまっていました。
ところが数年後、兄が転勤により遠方へ引っ越し、実家の維持管理を弟が担うことに。
固定資産税や修繕費の負担を巡り、次第に不公平感が生まれ、相続した家が揉めごとの火種になってしまったのです。
さらに、兄の持分を売却しようとしても、弟の同意が得られず、結局どちらも身動きが取れなくなってしまいました。
司法書士としてこのような相談は珍しくありません。
相続後に共有名義にしてしまうと、処分・利用・管理のすべてに他の共有者の同意が必要になるという法律上の制約があるためです。
相続した不動産の共有名義がもたらす「3つの後悔」
- 不動産を売りたくても売れない
相続した不動産を共有名義にしてしまうと、売却には全員の同意が必要です。
一人でも反対すれば、売却手続きは進められません。
これにより、相続人間での話し合いが長期化し、感情的な対立を招くことがあります。 - 維持管理や固定資産税の負担が不公平になる
実際に居住している人と、遠方に住む共有者とでは、管理負担や修繕費の負担に差が生じやすいです。
相続時には「平等」に見えた共有が、時間が経つにつれて「不平等」に感じられることが多いのです。 - 次の相続で問題が複雑化する
兄弟のどちらかが亡くなった場合、その持分がさらに次の世代に相続されます。
結果として、不動産の共有者が増え、共有関係が“雪だるま式”に複雑化します。
司法書士としても、この「代々続く共有トラブル」の処理は非常に難航するケースが多いです。
なぜ相続時に「共有名義」を選んでしまうのか
「公平に分けたい」という気持ちが落とし穴に
多くの方が共有名義を選ぶ理由は、「兄弟間で不公平にしたくない」という善意からです。
しかし、公平=共有ではありません。
むしろ、相続後の生活状況や家族構成の違いが原因で、不公平感が後から生まれるケースが多いのです。
また、「税金を節約できるのでは」と思われる方もいますが、
相続税や固定資産税の面で共有名義が特に有利になるケースはほとんどありません。
専門家に相談せずに相続登記を済ませてしまうリスク
司法書士のもとに寄せられる相談の中には、
「自分たちで登記したが後悔している」という声も少なくありません。
共有名義の登記は簡単にできる一方で、後から分割や持分変更をする際には、
全員の同意や新たな登記手続きが必要になり、結果的に費用も時間もかかってしまいます。
相続登記を行う際には、将来的な利用方法や相続人のライフプランを踏まえて設計することが重要です。
司法書士が勧める「共有名義にしない」ための相続対策
1. 現物分割ではなく「代償分割」を検討する
相続人の一人が不動産を単独で相続し、他の相続人に代償金を支払う「代償分割」は、
兄弟間の公平性を保ちながら、共有トラブルを防ぐ有効な方法です。
司法書士としては、感情的な対立が生まれる前に、代償分割を検討することを強くお勧めします。
2. 相続前の「遺言書」で共有を防ぐ
被相続人(親)があらかじめ遺言書を作成しておくことで、
「誰がどの財産を相続するか」を明確に定められます。
これにより、兄弟間での共有や話し合いを避け、スムーズな相続手続きを実現できます。
遺言書は形式の誤りがあると無効になることもあるため、
司法書士に依頼して法的に有効な遺言書を作成することが重要です。
3. 相続後に共有名義を解消する方法もある
すでに共有名義になってしまった場合でも、
持分の譲渡や交換、分筆登記などの方法で共有関係を解消できることがあります。
ただし、手続きには法律的な知識と登記の専門性が求められるため、
必ず司法書士に相談し、適切な方法を選択するようにしましょう。
まとめ:相続は「共有」よりも「単独名義」で円満に
兄弟で共有名義にすることは、一見「平等で仲の良い選択」に思えますが、
時間の経過とともに相続トラブルの原因になることが非常に多いのが現実です。
司法書士としての経験から言えるのは、
「相続の公平さ」は“共有”ではなく“明確な分割”によって実現すべき、ということです。
相続は一度きりの大切な手続きです。
後悔しないためにも、相続登記や遺言書作成の段階で司法書士に相談することを強くおすすめします。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階