相続

相続において土地家屋調査士に頼むべきケースとは|司法書士が解説する相続手続きの実務ポイント

相続では、相続登記や財産調査など司法書士が中心となって進める手続きが多くあります。しかし、相続に含まれる不動産の内容によっては、土地家屋調査士の専門的な業務が不可欠となる場面が生じます。

特に、相続する不動産が複雑な状況にある場合や、登記情報が実際の土地・建物と一致しない場合には、相続人だけでなく司法書士でも調整が難しく、土地家屋調査士の協力が必要になります。

この記事では、司法書士の視点から、相続において土地家屋調査士に依頼すべき代表的なケースを丁寧に解説します。相続の場面で生じやすい不動産の問題を理解し、スムーズな相続を進めるための参考にしてください。


土地家屋調査士とは|相続で関わる専門家

相続の相談を受ける中で、「司法書士と土地家屋調査士の違いがわからない」という声をよく聞きます。

土地家屋調査士の専門業務

土地家屋調査士は、主に下記のような業務を行います。

  • 土地の測量
  • 境界確定
  • 土地の分筆・合筆
  • 建物の表題登記
  • 未登記建物の調査・図面作成

これらは、土地の現況を正確に把握し、登記簿に反映するための専門業務です。

司法書士との役割の違い

司法書士は「権利関係の登記」、土地家屋調査士は「物理的な状況の登記」に関与します。
相続手続きにおいては、この2つが密接に結びつくため、ケースによっては連携して進める必要があります。


相続において土地家屋調査士に依頼すべき主なケース

ここからは、司法書士の実務経験から、実際に相続手続きで土地家屋調査士が必要となる典型例を紹介します。

1. 相続した建物が未登記だったケース

相続では、対象不動産が未登記であることが珍しくありません。

未登記建物が相続に及ぼす影響

未登記建物は登記簿上存在しない扱いになるため、

  • 相続登記ができない
  • 売却ができない
  • 固定資産税情報と登記情報が一致しない
    といった問題が生じます。

土地家屋調査士が行う対応

  • 建物の現地調査
  • 図面作成
  • 表題登記申請

これにより、相続財産として正式に登録することが可能になり、司法書士が相続登記を行える状態になります。

2. 相続した土地の境界が不明確なケース

相続人が最も悩む問題のひとつが「境界不明」です。

境界問題が相続に与えるリスク

境界が曖昧なままでは、

  • 売却や分割ができない
  • 隣地とのトラブルが起こりやすい
  • 相続人間で価値評価が争いになる
    といった問題につながります。

土地家屋調査士による境界確定

土地家屋調査士は、

  • 公図や資料の調査
  • 隣地所有者との立会い
  • 測量
  • 境界標の設置
    を行い、境界を確定します。

相続において不動産を誰が取得するか決める前に、境界を明確にしておくことは非常に重要です。

3. 相続で土地を分筆して遺産分割を行う場合

相続では「土地を複数人で分けたい」という希望が出ることがあります。

土地をそのまま共有にすると起きる問題

共有状態では、

  • 売却の同意が全員必要
  • 管理が難しい
  • 代が下るほど権利関係が複雑化
    といったリスクがあります。

土地家屋調査士が行う分筆手続き

分筆(1つの土地を複数に分ける)には、

  • 測量
  • 境界確定
  • 新たな地番の発行
    などが必要で、土地家屋調査士の専門業務です。

土地を相続人それぞれの単独名義にしたい場合、分筆は非常に有効な方法です。

4. 相続で登記簿上の面積と実測面積が異なる場合

相続では「登記面積が実際より大きい/小さい」という問題が多く見つかります。

面積の不一致は相続評価にも影響

  • 相続税評価額
  • 売却価格
  • 分割の公平性
    などに影響するため、正確な測量が必要です。

土地家屋調査士が行う地積更正登記

実測面積が判明した後、地積更正登記を行うことで、正しい面積に修正できます。
これは測量の専門家である土地家屋調査士でなければ対応できません。

5. 相続した家屋を建て替える際の建物滅失登記

相続後に「古い家を取り壊す」ケースも多くあります。

滅失登記を怠ると起きるトラブル

滅失登記をせずに放置すると、

  • 建替え手続きが進められない
  • 売却時に余計な手続きが必要になる
    などの問題が生じます。

土地家屋調査士が行う滅失登記

土地家屋調査士は解体業者との連携も多く、

  • 解体証明書の取得
  • 建物滅失の現地確認
  • 滅失登記申請
    をスムーズに進められます。

6. 相続土地国庫帰属制度の申請で測量が必要な場合

最近増えている制度が、不要な相続土地を国へ引き渡す「相続土地国庫帰属制度」です。

国庫帰属制度に測量が必要な理由

国は「境界が明らかである土地」しか引き取らないため、

  • 境界確定
  • 境界標の設置
  • 測量図の作成
    が求められます。

土地家屋調査士の専門性が最も活かされる場面といえます。


司法書士と土地家屋調査士が連携することで相続がスムーズに

相続手続きでは、

  • 相続人調査
  • 相続関係説明図の作成
  • 相続登記
    は司法書士が担当します。

しかし、相続不動産に物理的な問題がある場合、土地家屋調査士と連携することで、問題を早期に解決できます。

連携するメリット

  • 不動産の現況把握が正確
  • 相続トラブルの予防
  • 売却・活用・分割が円滑
  • 相続登記がスムーズに進む

相続において不動産の問題を総合的に解決するためには、両者の協力が不可欠です。


まとめ|相続における不動産問題は土地家屋調査士の専門領域

相続の場面では、

  • 未登記建物
  • 境界不明土地
  • 分筆が必要な土地
  • 面積不一致
  • 滅失登記
  • 国庫帰属申請の測量
    など、多くの場面で土地家屋調査士の力が必要になります。

司法書士は相続登記全体を統括する立場から、状況に応じて土地家屋調査士と協力し、相続人が最適な手続きを選べるようサポートします。

相続の相談を受けている中で、「土地の状態がよくわからない」「相続する不動産に問題がある気がする」と感じたら、早めにご相談ください。土地家屋調査士との連携も含め、最適な相続手続きをご案内いたします。

<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階