相続手続きには、不動産の相続登記や年金・保険の相続手続きなど、さまざまな工程があります。
しかし、相続の相談を受けていると、多くの方が驚かれるのが――
「相続手続きで一番時間がかかるのは銀行(金融機関)の相続手続き」
ということです。
相続というのは、相続人の調整、書類作成、確認作業などを含め非常に複雑ですが、特に銀行の相続は“圧倒的に時間がかかる”傾向があります。
本記事では、相続の専門家の視点から なぜ銀行の相続手続きが長期化するのか を徹底解説し、相続をスムーズに進めるコツも紹介します。
銀行の相続手続きはなぜ時間がかかるのか?
① 相続に必要な書類がとにかく多い
銀行の相続手続きでは、次のような多数の書類が求められます。
- 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書または遺言書
- 相続人の本人確認書類
- 銀行独自の相続届や同意書
相続手続きでは、相続人が複数いるほど必要書類が増えます。
また、戸籍は本籍地ごとに管理されているため、複数の自治体から取り寄せる必要があり、時間がかかるのが一般的です。
相続の書類を揃えるまでに1か月以上かかるケースも珍しくありません。
② 銀行によって相続手続きのやり方が違う
相続登記とは違い、銀行の相続には“統一ルール”がありません。
- 必要書類、提出書類の書式が銀行ごとに異なる
- 相続人の署名方法や記載内容の基準も独自
複数の銀行に口座がある場合、相続手続きは 銀行ごとに一から確認が必要 となるため、大幅な時間ロスになります。
相続の相談者の多くが、
「銀行AではOKだったのに銀行Bではダメと言われた」
と戸惑われます。
③ 相続人全員の確認が必要で、連絡が取りづらい
相続では、相続人全員の署名・押印が必要な書類が多くあります。
しかし相続人が多いケースでは、
- 連絡がつかない相続人がいる
- 書類の返送が遅れる
- 相続内容で意見が分かれる
- 相続人が遠方に住んでいる
といった事情から、相続に必要な書類が揃わないことが非常に多いです。
特に兄弟相続や再婚家庭の相続では、相続人の調整に時間がかかりやすく、相続手続き全体の長期化につながります。
④ 銀行内部での審査に時間がかかる
相続の書類を銀行に提出しても、すぐ手続きが完了するわけではありません。
銀行内部では以下のようなチェックが行われます。
- 戸籍の内容と相続関係の確認
- 遺言書の確認
- 相続人の本人確認
- 書類に不備がないかのチェック
- 上席の承認や本部審査
銀行内部の審査は段階的に行われるため、
1つの相続手続きに数週間以上かかることも珍しくありません。
相続登記と比べて、銀行は慎重に審査を進めるため、時間がかかりやすいのです。
⑤ 1つの銀行が終わってもほかの銀行が残っている
相続では、ほとんどの方が 複数の銀行に口座を持っている ため、手続きは銀行ごとに必要です。
銀行Aで相続手続きが完了したと思ったら、
銀行Bから追加書類を求められ、
銀行Cでは支店訪問が必要と言われ……
このループが続き、気付けば相続開始から半年以上経過していた、というケースも実際にあります。
相続の現場でよくある銀行手続きトラブル
相続書類が銀行基準に合わない
相続の遺産分割協議書は法的には自由に作成できますが、銀行によっては
「この書き方では手続きできません」
と差し戻されることがあります。
銀行は相続書類の表現に非常に厳しく、相続人の順番、書き方、押印位置など細部までチェックします。
遺言書があってもすぐに相続手続きできない
自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認が必要です。
検認待ちは1〜2か月かかることもあり、その間銀行の相続は進みません。
相続手続きは遺言書があればスムーズと思われがちですが、実際には遺言の種類によって時間がかかることがあります。
相続人のうち一人が非協力的
相続では、相続人全員の署名押印が必要な場面が多く、
1人でも協力しない相続人がいると手続きが止まってしまいます。
相続手続きは、相続人同士の人間関係が大きく影響します。
必要書類が何度も追加される
銀行の相続担当者から
「こちらの書類も必要でした」
と後から言われることがよくあります。
相続の書類は多く、また銀行の審査で不足が判明することがあるためです。
相続の銀行手続きをスムーズに進めるには?
① まずは相続人を確定し、相続関係図を作る
相続手続きの出発点は、相続人を確定することです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 相続人の戸籍
これらを揃えて、相続関係図を作ると銀行の相続手続きがスムーズになります。
② 相続人全員の連絡を早めに取っておく
相続手続きで最も時間がかかるのが「相続人の協力待ち」です。
- 相続の意思確認
- 書類の返送スケジュール
- 手続きへの同意
これらを早めに行っておくと相続手続きのスピードが大きく変わります。
③ 遺産分割協議書は銀行仕様で作る
銀行相続では、遺産分割協議書の書き方で手続きが止まることがあります。
相続のトラブルを避けるためにも、銀行が受け入れやすい形式で作成することが重要です。
④ 相続の書類はまとめて管理する
相続には多数の書類が必要なため、相続ファイルを作って整理しておくと混乱を防げます。
⑤ 早めに専門家へ相談する
相続に慣れていない方が銀行を回ると、数ヶ月かかることがあります。
相続に詳しい専門家へ相談することで、手続きが格段にスムーズになります。
相続の銀行手続きは専門家に任せるとどう違う?
・必要書類を最短で集められる
相続に必要な戸籍や書類はどれを揃えるべきか明確なため、無駄がありません。
・銀行ごとの提出基準に合わせた書類を作成できる
相続専門家は銀行ごとの傾向を把握しているため、差し戻しが減ります。
・相続人の連絡調整を代行
相続人同士の連絡は負担が大きいため、専門家に任せることでストレスを軽減できます。
・不備があればすぐ修正
銀行と直接やり取りしてくれるため、相続手続きが止まりません。
結果として、相続手続き全体の時間を大幅に短縮できます。
まとめ:相続手続きで一番時間がかかるのは銀行。早めの準備が成功のカギ
相続手続きの中で最も時間がかかるのは、間違いなく 銀行の相続手続き です。
その理由は、
- 相続に必要な書類が多い
- 銀行ごとに相続手続きのルールが違う
- 相続人全員の協力が必要
- 銀行内部の審査に時間がかかる
- 複数の銀行で同時進行する
など、多種多様な要素が重なるためです。
相続をスムーズに進めるには、
早めの準備と、相続の専門家によるサポートが不可欠です。
銀行の相続手続きでお困りの方は、お気軽に当事務所にご相談ください。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階