遺産分割は、相続人同士の合意に基づき相続財産を分ける手続きです。しかし、実務では法的な誤解や勘違いが原因でトラブルになることが少なくありません。
特に、相続登記と結びついた不動産の分割では、些細な認識の違いが大きな問題につながります。
司法書士としての経験から、遺産分割でよくある法的誤解とその正しい理解を整理して解説します。
遺産分割と相続登記の関係
相続登記は遺産分割後に行うのが基本
不動産の相続では、遺産分割協議を経て誰がどの財産を取得するかが確定してから、初めて相続登記を行います。
ここで誤解されやすいのは、「遺産分割協議前でも相続登記が可能」と考える人がいることです。
遺産分割協議書と相続登記の書類関係
遺産分割協議書は、相続登記の申請に必須の書類です。
誤解として、「口頭で決めれば良い」と考える人がいますが、司法書士の手続きでは書面がないと登記申請は受理されません。
遺産分割で起きやすい法的な誤解
① 相続人全員の同意が不要と考える
遺産分割では、法定相続人全員の合意が原則必要です。
誤解として、一部の相続人だけで決めてしまうケースがありますが、これは法律上無効となり、後で訴訟に発展することもあります。
司法書士は、全員の署名・押印を確認し、相続登記申請に反映することで、後日争いにならないように手続きを進めます。
② 遺言書があれば遺産分割協議は不要と思い込む
遺言書がある場合でも、遺言内容に不明確な点や複数の相続財産の分配が含まれている場合は、遺産分割協議が必要です。
相続登記では、遺言書だけでは登記申請が受理されないことがあるため、司法書士による書類チェックが不可欠です。
③ 不動産は現物分割しないといけないと思い込む
相続財産としての不動産は、現物で分割するだけではありません。
現金で精算する代償分割や、不動産を共同所有にして後で売却する方法も認められています。
誤解により不動産を無理に分割しようとすると、後で相続登記の手続きが複雑化します。
遺産分割協議と相続登記で注意すべき点
司法書士が確認する「名義人の特定」
相続登記では、遺産分割協議書に記載された名義人情報が正確であるかを司法書士が確認します。
誤解として、「名字が同じだから問題ない」と考える人もいますが、同姓でも別人の場合があり、登記が受理されないリスクがあります。
建物が未登記の場合
相続登記では、土地と建物の名義が揃っていることが理想ですが、建物が未登記の場合は、一般的に、遺産分割協議によって取得した相続人を所有者として表題登記を行い、その後所有権保存登記を行う必要があります。
相続分の理解不足
相続人間で「自分は多くもらえるはず」と誤解するケースがあります。
法定相続分を知らないまま遺産分割協議をすると、不公平感から争いが発生することも。
司法書士は法定相続分の説明を行い、納得した上で協議書を作成します。
遺産分割で発生しやすい争いのパターン
① 不動産の評価額を巡る争い
不動産は現金と異なり評価が難しいため、相続登記の前に評価額で揉めることがあります。
司法書士は必要に応じて、固定資産税評価額や専門家の評価を参考に、分割方法を提案します。
② 過去の贈与や遺留分の誤解
生前贈与があった場合、相続分に加算すべきかどうかが争点になることがあります。
相続登記前に整理しておかないと、登記完了後に争いになり、名義変更のやり直しが必要になることもあります。
③ 連絡が取れない相続人がいる
相続登記には全員の署名が必要ですが、海外在住や行方不明の相続人がいる場合があります。
司法書士は、戸籍や住民票などで相続人を特定し、場合によっては不在者財産管理人を活用して相続登記を進めます。
遺産分割協議をスムーズに進めるポイント
司法書士による事前相談が重要
遺産分割協議前に司法書士に相談することで、相続登記に必要な書類・手続き・注意点を把握できます。
これにより、協議がスムーズに進み、後日トラブルになるリスクを最小限にできます。
書面での合意を徹底
口頭だけで協議を終えると、後で「そんな話はしていない」と争われるケースがあります。
司法書士が作成する遺産分割協議書は、全員の署名押印を確認した正式書面となり、相続登記の申請にも必須です。
不動産の現物分割と代償分割の選択肢
不動産を分割する場合、現物分割が難しいときは代償分割や共有持分での登記などの選択肢があります。
司法書士は、各相続人の希望や公平性を考慮して最適な方法を提案します。
遺産分割と相続登記の重要性まとめ
- 遺産分割での法的誤解は、相続登記の手続きに直結する
- 相続人全員の合意、署名押印、正確な名義情報が必要
- 不動産評価、未登記建物、海外在住相続人など、注意すべきポイントが多い
- 司法書士に相談すれば、協議と相続登記をスムーズに進められる
遺産分割は感情も絡みやすく、法的知識が不足すると後から大きなトラブルに発展します。
司法書士は、相続登記を正確に行い、相続人間の争いを未然に防ぐ専門家です。
相続財産に不動産が含まれる場合は、早めの相談が安心で確実な手続きを実現します。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階