「休眠会社(休眠法人)」とは、一般的に長期間企業活動を行っていない会社を指します。休眠会社は、全国に数多く存在します。一見すると無害に思える休眠会社ですが、放置を続けることで思わぬリスクに直面することも少なくありません。
本記事では、「休眠会社」とは何かを再確認し、その放置によって発生し得るリスク、そして適切な対策について、司法書士の視点から解説いたします。
休眠会社とは何か?
休眠会社の定義
休眠会社とは、登記上は存在しているものの、実際には事業活動を行っていない法人のことを指します。税務署へ「休業届」等を提出している場合もありますが、法務局への登記が残っている限り、その会社は法人として「存続」していることになります。
登記簿上の「生きた会社」
たとえ実態として活動していなくても、登記簿に役員や本店所在地などの情報が記録されている限り、法律上は法人格を維持しています。つまり、登記簿上では「生きた会社」であるため、一定の義務を果たさなければならない状態にあるのです。
休眠会社を放置するリスク
リスク①:みなし解散による強制抹消
長期間登記の変更をしていないと、法務局から「みなし解散」の通知が送付される場合があります。会社法第472条に基づき、12年以上登記変更がされていない株式会社に対しては、「解散したもの」とみなされ、公告・通知の後、一定期間を経て職権で解散登記がなされます。
この手続きに気付かないまま放置すると、会社の法人格が強制的に消滅し、将来的に事業再開や名義変更を行うことが困難になります。
リスク②:役員の任期満了による違法状態
株式会社の場合、取締役の任期は最長でも10年(非公開会社の場合)です。役員の変更登記を怠っていると、任期満了にもかかわらず登記が更新されず、会社としての法的な正当性が損なわれます。
その結果、代表取締役の行為が無効とされる恐れや、法務局から過料の制裁を受ける可能性も出てきます。
リスク③:第三者の不正利用リスク
登記情報が古いまま放置されていると、悪意のある第三者によって会社名義が悪用される危険もあります。たとえば、休眠会社の名義を使って契約を結ばれたり、詐欺に利用されたりするなど、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
リスク④:税務上の問題
税務署に対して「休業届」を提出していても、法人住民税の均等割(赤字でも毎年一定額課税される税金)が課されることがあります。また、事業を再開する際には税務署への再開届出も必要になり、事務手続きが煩雑になります。
休眠会社への具体的な対策
休眠状態の会社をそのまま放置することは、上記のように多くのリスクを伴います。では、どのように対策を講じれば良いのでしょうか。
対策①:会社の解散・清算手続き
すでに事業再開の見込みがない場合は、法的な手続きに則って会社を解散し、清算を行うのが最も安全な選択です。解散から清算結了までの一連の登記手続きは、司法書士に依頼することでスムーズに進められます。
解散・清算の基本的な流れ
- 株主総会で解散決議
- 解散登記の申請
- 清算人の就任
- 財産の精算・債務処理
- 清算結了登記の申請
これらの手続きを完了させることで、法人格をきちんと消滅させ、今後の法的トラブルを防止することができます。
対策②:休眠会社の整理・再生の検討
一時的に事業を休止しているだけで、将来的に事業を再開したいと考えている場合は、必要な登記を適切に行い、法人としての維持管理を怠らないようにしましょう。
具体的には、役員変更、本店移転、定款変更などが必要な場合には、速やかに登記申請を行うことが重要です。また、税務上も「休業届」や「再開届」を適切に提出しておく必要があります。
対策③:司法書士への相談・定期的なチェック
自社の登記状況が現状に合っているか、定期的に確認する習慣を持つことが大切です。登記情報の確認や、必要な変更手続きについては、司法書士に相談することで正確かつ迅速に対応が可能です。
また、法改正や制度変更により手続きが変わることもあるため、専門家のサポートを受けることでトラブルを未然に防げます。
放置しないことが最大のリスク対策
会社を休眠状態で放置することは、一時的な問題ではなく、将来にわたって継続的なリスクを生む原因になります。事業を行っていないからといって、「何もしなくてよい」というわけではありません。
登記上存在する限りは、法的義務が発生し、社会的責任も伴うことを理解しておく必要があります。
まとめ:休眠会社を正しく管理・処理するために
- 休眠会社は、放置しても自然に消えることはありません。
- 長期間登記がないと「みなし解散」として法務局から通知が来る可能性があります。
- 法的リスク・税務リスク・信用リスクなど多くの問題が潜在しています。
- 不要な法人は速やかに解散・清算することが安全です。
- 継続予定がある法人は、定期的に登記内容を見直すことが重要です。
- 専門家である司法書士に相談することで、的確な対応が可能です。
司法書士事務所では、休眠会社に関するご相談、解散・清算手続きのサポートを承っております。
会社の現状に応じて最適な対応方法をご提案いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階