相続

兄弟でもめないための相続対策について司法書士が解説

相続というのは、単なる財産の分け方の問題だけではありません。
家族の関係性や、故人への思い、育ってきた環境など、さまざまな感情が絡むため、相続をきっかけに兄弟間でもめてしまうケースは決して珍しくありません。

この記事では、「兄弟でもめないために事前にできる相続対策」について、司法書士の立場から詳しく解説します。トラブルを未然に防ぎ、大切な家族の関係を守るためのヒントにしてください。

なぜ兄弟間で相続トラブルが起こるのか?

感情の行き違いが大きな原因

相続に関するトラブルの多くは、単に「お金」や「財産」を巡るものではありません。
「自分は親の介護をしてきたのに、相続分が平等なのは納得できない」
「昔から兄ばかり優遇されていた」
「長男が勝手に遺産を使っている」
といった感情のもつれが、大きな争いの火種になります。

曖昧な遺産の内容・分け方

  • 遺言書がない
  • 財産の内容がはっきりしない
  • 不動産の価値が高すぎて分けにくい

など、「どうやって分けたら良いか」が曖昧なことも争いの原因となります。特に、不動産しか財産がない場合、「売るのか、誰が住むのか、名義はどうするのか」などで意見が分かれやすくなります。

【事例】相続でもめた兄弟たちのケース

ケース1:親の介護をしていた妹が不満を感じた例

3人兄弟の末っ子である妹が、長年親の介護をしてきました。しかし、遺言書がなかったため、法律上の相続分に従い、兄たちと均等に遺産が分けられることに。妹は「介護をしてきた私が一番苦労したのに」と不満を抱き、家族間に溝が生まれてしまいました。

ケース2:長男が不動産を独占しようとした例

相続財産の中で、最も高額なのは実家の不動産。長男は「長男だから当然、自分が住むべきだ」と主張し、他の兄弟には現金も渡さずに登記を進めようとしました。これに次男・三男が猛反発し、調停に発展しました。

→ どちらのケースも、「事前の対策」があれば防げた可能性があります。

相続対策の基本は「見える化」と「明確化」

財産を「見える化」する

まず必要なのは、相続財産を整理しておくことです。

  • 預貯金や不動産の一覧を作成
  • 生命保険の受取人を確認
  • 借金やローンの有無も明記

「親の財産がどこにあるのか分からない」「何がどれだけあるのか把握できない」状態は、トラブルのもとです。
元気なうちに、ご本人がエンディングノートなどを使って整理しておくのが理想的です。

誰に何を相続させるのかを明確化する

次に重要なのが、「誰に何をどれだけ相続させるのか」を明確に決めることです。その手段として最も確実なのが「遺言書の作成」です。

遺言書は兄弟トラブルを防ぐ最大の武器

なぜ遺言書が重要なのか?

遺言書がある場合、原則としてその内容が優先されます。遺言によって、以下のようなことを明確にできます:

  • どの財産を誰に渡すか
  • 特定の人に多めに相続させたい理由(例:介護の負担)
  • 遺言執行者の指定(手続きをスムーズに進める)

つまり、遺言書は“争族”を防ぐための設計図とも言えます。

公正証書遺言をおすすめする理由

遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、トラブル防止には公正証書遺言が最も安全です。

項目自筆証書遺言公正証書遺言
作成方法自分で書く公証役場で作成
検認の要否必要不要
紛失・改ざんのリスクありなし
費用安い多少かかる

司法書士や公証人と相談しながら、法的に有効で明確な遺言書を作ることで、兄弟間のトラブルを未然に防ぐことができます。

不動産の分け方に注意!登記トラブルに要注意

不動産は“分けにくい”財産

不動産は現金のようにきれいに等分できません。たとえば、3人兄弟で1つの家しかない場合、共有名義にするという方法がありますが、以下のようなリスクもあります:

  • 売却・賃貸などの判断に全員の合意が必要
  • 将来的に他の相続人に権利が移り、権利関係が複雑に

現実的な対応策

  • 代償分割:一人が不動産を取得し、その分現金を他の相続人に渡す
  • 換価分割:不動産を売却して現金化し、分ける

どの方法が適しているかは、財産の内容や兄弟の関係性によって異なります。司法書士に相談することで、具体的な分割方法のアドバイスが受けられます。

兄弟で円満に相続を進めるためにできること

生前から家族間で話し合っておく

「死んだ後の話をするなんて不謹慎」と敬遠されがちですが、元気なうちに家族全員で話し合うことが最も有効な相続対策です。

  • 誰が介護しているのか
  • 不動産をどうするか
  • 相続人の意向はどうか

早いうちに意見を共有しておくことで、相続発生後の混乱を避けることができます。

専門家を交えての「家族会議」もおすすめ

司法書士・税理士・行政書士・弁護士などの専門家が同席する「家族会議」のサポートも行っています。中立的な立場から、相続全体のバランスを見ながらアドバイスが受けられるため、家族内でのわだかまりを減らす効果があります。

まとめ:兄弟間の相続トラブルは「事前対策」で回避できる

相続でもめる兄弟は、もともと仲が悪かったわけではありません。
「話し合い不足」と「情報の不透明さ」が大きな原因です。

そのためには、

  • 財産の見える化
  • 明確な遺言書の作成
  • 不動産の分割方法の検討
  • 早めの専門家への相談

これらの「事前の備え」が、家族の未来を守ります。

当司法書士事務所では、相続に関するご相談を随時受け付けております。
遺言書の作成支援、不動産の相続登記、分割方法のアドバイスなど、幅広く対応可能です。

<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階