遺言

自筆証書遺言を書くときに一番多い「書き間違い」とは?|司法書士が詳しく解説

自筆証書遺言は、手軽に作成できる遺言として広く利用されています。しかし、司法書士として相続手続きの相談を受けていると、遺言があるにもかかわらず「書き間違い」のせいで無効になったり、相続人間のトラブルにつながったりするケースがあります。

本記事では、司法書士がこれまでの実務経験から感じる 「自筆証書遺言で最も多い書き間違い」 を中心に、よくあるミスと正しい書き方のポイントを詳しく解説します。


自筆証書遺言で一番多い書き間違いは?

結論:財産の“特定ミス”が圧倒的に多い

司法書士の実務で最も多い書き間違いは、財産の特定が不十分であることです。
具体的には、

  • 不動産の地番を書き間違える
  • マンション名や号室を誤記する
  • 銀行口座番号の数字を抜かす
  • 金融機関名を略称で書いてしまう
  • 財産の名称が複数あるのに曖昧に記載する

などが挙げられます。

司法書士が相続登記や遺言執行を行う際、この財産の特定ミスがあると、遺言の内容が不明確であるとして無効になる可能性があります。

つまり、遺言の目的が“正しく財産を引き継ぐこと”であるはずが、書き間違いによって意味が失われてしまうのです。


なぜ財産の特定ミスが起こるのか?

不動産の情報は普段使わないから忘れてしまう

不動産の表示は、住居表示とは異なることが多く、「○丁目○番○号」と「地番(例:○番○)」が違うため、混同した書き方になるケースがよくあります。
司法書士が相続登記を行う際にも、「この地番、本当にこの建物?」と確認が必要なケースは珍しくありません。

通帳が複数あり、数字が混在しやすい

銀行の支店名、口座番号、名義などを書く際に、
「昨日見た別の通帳の番号を書いてしまった」
というミスがよく発生します。
司法書士に相談いただく際にも、数字の一部が間違っていて特定できないことがあります。

専門的な表記を理解していない場合がある

不動産や金融資産の正式名称は専門的であり、一般的な方には馴染みがありません。
例:

  • “○○山第一マンション”と“○○山マンション”を間違える
  • “普通預金口座”と“定期預金口座”を混同する

司法書士が確認するとすぐ分かりますが、自筆で書くと誤記しやすいポイントです。


自筆証書遺言で起きやすいその他の書き間違い

日付の間違い

遺言は「いつ書いたか」が極めて重要です。
しかし、実際の司法書士の現場では、

  • 和暦と西暦を混在
  • 年月日のどれかが抜けている
  • 未来の日付を書いてしまう

などのミスが非常に多く見られます。

日付が特定できない場合、遺言は無効と判断されるおそれがあります。

署名と押印の書き間違い・押印忘れ

自筆証書遺言は、本人の署名が必要です。
しかし、

  • 印鑑を押さずに保管していた
  • 署名が戸籍と異なる書き方

といったミスがあります。

司法書士に持ち込まれた遺言の中にも、「署名していない」ケースは意外と多く存在します。

相続人の名前を誤記する

たとえば以下のような誤記が多いです。

  • 結婚して姓が変わったのに旧姓を書いている
  • 亡くなった家族の名前を含めてしまう
  • 同じ名前の家族と混同

司法書士としては戸籍で確認しますが、自筆証書遺言だけでは判断が難しくなることがあります。

遺言内容そのものが矛盾している

たとえば、

「長男に不動産をすべて相続させる」
と書いた後の別ページで
「不動産は長女にも譲る」

と書いてしまうようなケースです。

ページをまたぐと誤記に気づかないまま保管されることがあり、司法書士が確認した時点で大きなトラブルにつながります。


司法書士が教える“書き間違いを防ぐコツ”

① 財産目録は正確な資料を見ながら書く

不動産なら登記事項証明書、金融資産なら通帳の写しなど、必ず正式書類を見ながら書くことで誤記が防げます。

② 財産目録は自筆でなくてもOK(法改正で可能)

すべてを手書きにしようとするとミスが増えます。
現在は、財産目録はパソコンやコピーで作成してよいので、司法書士が関与すると正確性が大幅に高まります。

③ 日付・氏名・押印は必ず最後に見直す

司法書士が確認する際も、この3つは最初にチェックするポイントです。

④ 一度書いた遺言は数日寝かせて読み返す

誤字・脱字は、書いた直後は気づきにくいものです。
司法書士への相談の前に、数日置いて読み直すだけで誤記が減ります。

⑤ 書く前に司法書士へ相談する

事前に司法書士に相談すれば、書き間違いを防げるだけでなく、自分の意思をより正確に遺言に反映できます。


自筆証書遺言を“安全に”残すなら司法書士に相談を

司法書士は、不動産の相続や遺言内容の適法性を判断し、書き間違いのミスを防ぐプロです。
司法書士に相談すると、

  • 書き間違いがない遺言の作成
  • 家族が困らない遺言内容の整理
  • 自筆証書遺言保管制度への申請サポート
  • 必要なら公正証書遺言への切り替え案内

など、総合的にアドバイスできます。

自筆で書ける遺言ほど、司法書士のサポートがあるかどうかで、将来の家族の負担が大きく変わるのです。


まとめ:自筆証書遺言で最も多い書き間違いは“財産の特定ミス”

司法書士が実務で最も多く経験する自筆証書遺言のミスは、
不動産や預貯金などの財産に関する書き間違い です。

財産が正確に記載されていない遺言は無効になる可能性があり、家族が大きな負担を負うことになります。

自筆証書遺言を書く際には、司法書士のサポートを受けながら、正確で分かりやすい遺言を作成することが重要です。

遺言を残したい方、自筆証書遺言の書き方に不安がある方は、ぜひ当司法書士事務所へご相談ください。

<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階