相続というと「財産が多い家ほど揉める」と思われがちですが、実際には財産が少ないケースでも争いが起きることが少なくありません。
むしろ、遺産が少ないほど「どう分けても大した差はないはず」と考えてしまい、感情が先走って揉めるケースも多いのです。
今回は、司法書士としての視点から、財産が少ない相続でも揉める理由と、揉める前にできる対策を分かりやすく解説します。
財産が少ない相続でも揉める理由
1. 「遺産が少ないから揉めない」は誤解
遺産が少ない場合、金銭的な分配が少ないため「揉める理由がない」と思い込む人が多いですが、それは大きな誤解です。
実際には、遺産が少ないほど「分け方の基準が曖昧」になりやすく、相続人の感情が優先されて争いに発展しやすいのです。
例えば「母の介護をしたから多くもらうべき」「遠方に住んでいたから負担が少ない」など、金額よりも“貢献度”や“情”が議論の中心になります。
このような場合、遺産の額が小さくても、相続人間の不満が大きくなりやすいのです。
2. 相続手続きの負担が重く感じられる
財産が少ない場合でも、相続には手続きが必要です。
特に、不動産の名義変更(相続登記)や、金融機関の解約手続き、各種名義変更などは、手間がかかることがあります。
さらに、相続税はかからなくても、相続登記や戸籍収集などの費用や時間は発生します。
「遺産が少ないから自分でやれる」と思っていた人が、手続きの煩雑さに不満を感じ、相続人同士で意見が対立するケースもあります。
司法書士は、相続登記や必要書類の収集、遺産分割協議書の作成などを支援し、手続きの負担を減らすことができます。
3. “感情”が中心になりやすい
財産が少ない相続ほど、感情が前面に出やすいという特徴があります。
金銭的な価値が少ない場合、相続人は「公平さ」よりも「自分の気持ち」を優先しがちです。
「親の面倒を見たのは自分なのに、他の兄弟が同じ扱いを受けるのは納得できない」
「最後まで一緒に住んでいたのに、遺産が平等に分配されるのはおかしい」
このような感情が蓄積すると、相続の場が“話し合い”ではなく“争い”に変わってしまいます。
揉めやすい財産の種類と原因
1. 不動産があると揉めやすい
財産が少なくても、不動産が含まれると揉める確率が高くなります。
現金なら分け方が単純ですが、不動産は分割が難しいからです。
相続人の中には「住み続けたい人」「売って現金化したい人」「管理が面倒な人」など立場が異なることがあります。
このような場合、誰が住むか、誰が売るか、共有名義にするのかなど、意見が分かれやすいのです。
また、共有名義のまま放置すると、将来的に売却や処分が難しくなり、相続人間のトラブルが長期化することもあります。
司法書士は、相続登記や共有持分の整理など、適切な手続きを提案できます。
2. 家族構成が複雑な場合
再婚や内縁関係、前妻・後妻の子がいる場合など、家族構成が複雑になるほど相続は揉めやすくなります。
例えば、前妻の子と後妻の子が同じ相続人となると、「どの程度の配分が公平か」という問題が生じやすいです。
このような場合、遺言書がないと、法定相続分だけでは納得できない相続人が出てきます。
司法書士は、家族構成に応じた適切な遺言書作成や遺産分割の調整を支援できます。
3. 遺言書がない場合の解釈の違い
遺言書がない場合、法定相続分に基づいて遺産分割を行いますが、現実には遺産の種類や相続人の状況により、解釈が分かれやすいです。
特に財産が少ない場合、相続人は「少ない遺産をどう分けるか」に敏感になり、意見の違いが大きくなります。
「遺産の中にある物品の価値が不明」
「親が生前に渡したお金をどう扱うべきか」
「介護や生活支援の貢献をどう評価するか」
このような問題は、金額が少ないほど揉めやすいと言えます。
揉める前にできる対策
1. 遺言書を作成する
遺産が少なくても、遺言書があると揉める可能性は大きく減ります。
遺言書は、相続人が遺産分割で争う前に、被相続人の意思を明確に示す役割があります。
特に、財産が少ない場合こそ「公平さ」より「意思」を示すことが重要です。
司法書士は、法的に有効な遺言書の形式や内容の確認、作成支援を行うことができます。
2. 相続人同士で早めに話し合う
遺産が少ない場合、話し合いを避ける人が多いですが、実は早い段階で話し合うほど争いを防げます。
相続人が集まり、遺産の内容や分割の方針を共有することで、不安や誤解が減ります。
「遺産が少ないから後で決めればいい」という考えは、後々揉める原因になります。
司法書士は、話し合いの場に同席して調整し、円滑な合意形成をサポートできます。
3. 共有名義の整理や不動産の扱いを決める
不動産がある場合、共有名義のまま放置すると将来のトラブルに繋がります。
相続後に「誰が管理するか」「売却するか」などで揉めることが多いため、早めに方針を決めることが重要です。
司法書士は、相続登記や共有持分の整理、売却に必要な書類作成などを支援し、トラブルを未然に防ぐ役割を担います。
司法書士ができること(相続トラブルを防ぐ支援)
1. 相続手続きの整理と代行
司法書士は、相続登記をはじめ、遺産分割協議書の作成、戸籍収集、名義変更などの手続きを一括して支援できます。
これにより、相続人の負担が軽減され、争いの種を減らすことができます。
2. 遺言書作成の支援
遺言書は、形式が不備だと無効になる可能性があります。
司法書士は、遺言書の形式や内容について適切にアドバイスし、将来の争いを未然に防ぐサポートが可能です。
3. 相続人間の調整・トラブル対応
相続が揉めた場合でも、司法書士は中立的な立場で調整を行い、円満な解決を目指すことができます。
必要に応じて弁護士と連携しながら、適切な手続きや話し合いを進めることも可能です。
まとめ:財産が少なくても争いは起きる
財産が少ない相続でも、感情や負担、家族関係によって揉めることは十分にあります。
「遺産が少ないから大丈夫」と安易に考えず、早めに遺言書を作成したり、相続人同士で話し合いを行うことが重要です。
司法書士は、相続手続きや遺言書作成、相続登記など、争いを避けるための支援を行う専門家です。
相続について不安がある場合は、まずはお気軽に司法書士事務所にご相談ください。
<執筆者>
司法書士 齊藤 尚行
事務所:埼玉県さいたま市岩槻区東町二丁目8番2号KUハイツ1階